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本稿では、Axie Infinityをはじめとする、ユーザーが報酬を「稼ぐ」(”play-to-earn”)ことを想定したブロックチェーンゲームについて、日本法上の問題点を検討します。

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I ブロックチェーンゲームとplay-to-earn

ブロックチェーンゲームは、ブロックチェーン技術を利用したゲームであり、多くの場合、ゲームアイテムがブロックチェーン上のトークンとして発行され、当該ゲームアイテムがブロックチェーン上で移転可能とされています。 最近では、ブロックチェーンゲームの特質を用いて、ゲームのプレイを通じて暗号資産や法定通貨と交換可能なトークンを提供することで、ユーザーがリアルマネーを稼ぐことができる”play-to-earn”という新しいゲームモデルが話題となっています。 とりわけ、ベトナムのSky Mavis社が運営するAxie Infinityでは、その公式Twitterが、2021年8月6日に、1日あたりのアクティブユーザー数が100万人を超えたと報告しています。また、DappRadarのデータによれば、同年9月2日時点において、Axie InfinityのNFT(ゲームアイテム)の取引総額は11.7億ドルを超えています。Axie Infinityユーザーの国籍は、フィリピンやインドネシアなどの賃金の安い発展途上国が多く、ゲーム自体の面白さやキャラクターデザインの魅力などに加え、このplay-to-earnモデルで「稼げる」ことで話題となり、ユーザー数を伸ばしたことが推測されます。

なお、Axie Infinityは日本語に対応しておらず、主に日本国外の居住者に向けて提供されています。このように、外国企業が外国居住者に対してゲームを提供する場合、日本法規制の適用はありません。実際には日本居住者もプレイしていることから理論的には日本法も適用され得ますが、日本プレイヤーが多数存在する等でなければ実務上は日本では大きな問題にはならないとは思われます。そのようには考えられるものの、本稿では、日本居住者を主たるターゲットとしてplay-to-earnのゲームが提供された場合に、日本ではどのような法律が適用されるか、という観点からAxie Infinityを例として検討することで、play-to-earnのブロックチェーンゲームにおける種々の法的問題点を概観します。

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公式ホワイトペーパーより引用(https://whitepaper.axieinfinity.com/)

II Axie Infinityにおけるplay-to-earn

Axie Infinityは、主にAxieというキャラクターを育成し、相手と戦わせるゲームです(以下、ゲーム名と区別するために、当該キャラクターを片仮名で「アクシー」と表記します。)。ユーザーは、ゲームをプレイするために、まず3体のアクシーを購入する必要がありますが、アクシーは見た目や能力が異なるNFTとして構成されているため、いくつかのマーケットプレイス1で自由に取引をすることができます。 ユーザーは、デイリークエストクリア報酬、アドベンチャーモード(PvE2)の攻略、アリーナ(PvP3)の攻略、シーズンのランキング報酬などによって報酬を獲得することができます。そのほか、アクシーをブリーディングして新しいアクシーを生み出して販売したり、スカラーシップという制度で他人にアクシーを貸し出して報酬の一部を受け取ったりすることができます。さらに、LANDという仮想空間上の土地を購入し、その土地で産出された資源やトークンの一部を獲得する機能の実装も予定されているようです。 アドベンチャーモードやアリーナをプレイするためにはエナジーが必要であり、エナジーは、保有するアクシーが多いほど時間当たりの回復量が多くなるよう設定されています。また、ブリーディングで新しいアクシーを生み出す際には、一定のSLPというトークンの消費を伴います。

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公式ホワイトペーパーより引用(https://whitepaper.axieinfinity.com/)

III play-to-earnモデルで検討すべき法律とそのまとめ

play-to-earnモデルのブロックチェーンゲームを提供する場合、景品表示法の景品規制や刑法の賭博罪、その他特定商取引法など、様々な法律上の問題点を検討する必要があります。以下はそのまとめで、それぞれIVにて詳述します。

まとめ

[景品表示法]

[賭博罪]

**[特定商取引法]**誘引の仕方によってはいわゆる内職商法として規制される場合がありえ、勧誘方法に留意する必要がある。

IV 各法的論点の検討

1 景品規制

(1) 「景品類」該当性 「景品類」とは、顧客を誘引する手段として、事業者が、自己の供給する物品又は役務の取引に付随して提供する、物品その他経済上の利益をいいます。 このうち、play-to-earnモデルのブロックチェーンゲームにおいては、主に取引付随性の要件を満たすかどうかが問題となります45

この点、取引を条件として他の経済上の利益を提供する場合のように、取引と経済上の利益の提供が直結しているケースは、典型的な取引付随性が認められる場合です。また、取引を条件としているとはいえない場合であっても、商品を購入することにより、経済上の利益の提供を受けることが可能又は容易になる場合には、取引付随性が認められます。