自分たちが思い描くソフトウェアを自由自在に組み立てられるNotion。そして誰でも自由にデザインできるプラットフォームを提供するCanva。どちらのサービスも、ユーザーが思い描くデザインを自由に作れる環境を提供しています。そしてどちらも海外発のサービスながら、日本に根付き、日本ユーザーに向けて改善を進めています。今回、両社の日本代表が出会い、3回にわたって対談することに。1回目のテーマは「ローカライゼーション」。日本ユーザーに愛されるために、どんな取り組みを行ったのかを語ります。
登壇者
植山 周志さん
Canva Japanカントリーマネージャー。2019年8月にCanvaに転職すると同時にシドニーに移住。日本、アジアの成長を担当。ありえないおじさんを目指すぶっ飛び先生としても知られている。
西 勝清
Notionゼネラルマネージャー、日本担当。2020年9月に日本1号社員として入社。営業やマーケティング、ビジネスオペレーション全般を統括。人生で一番嬉しかったことは、ハワイでダイヤモンドヘッドを見れたこと。
Canvaとは?
オーストラリア発のグラフィックデザインプラットフォーム。オンライン上で画像やデザインを作成・編集でき、豊富なテンプレートと素材を活用することでデザイン経験のないユーザーでも簡単におしゃれな制作物をデザインできます。
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ローカライゼーションの第一歩は日本語
Notion西勝清(以下、西):Notion日本1号社員の西です。今日はよろしくお願いいたします。
Canva植山周志さん(以下、植山):西さん、今日はよろしくお願いいたします。Canva Japanカントリーマネージャーの植山です。今日は対談できて嬉しいです。
西:実は僕自身、1人のユーザーとしてCanvaさんにお世話になった過去があります。Notionの日本オフィスができた時、日本オフィスには僕しかおらず、1人ながらウェビナーをやりたいなと考え、告知用のLPとバナーを作ることになりました。Notionっぽいデザインを作らないといけないとなった時にどうしようと思っていたら、友人からCanvaを薦めてもらい、使いはじめました。
植山:嬉しい! 使ってみていかがでしたか?
西:使い方を学ぶことなく直感的に作ることができました。デザインを学んだことのない僕でも作れるってすごいことですよね。Notionもコーディングスキルがなくてもサイトをゼロから構築できるので、親近感がありました。
植山:ありがとうございます。僕自身もNotionをプライベート利用していて、オフラインになってもちゃんと動いてくれるので、作業をサクサク進められます。それに書き心地が気持ちいい。これ、すごいことだと思っています。
西:ありがとうございます! さて3回にわたって開催する対談ですが、今日は1回目。「ローカライゼーション」をテーマに話せればと思います。Canvaは2017年に日本にローンチしましたが、当時はどんな苦労がありましたか?
植山:苦労は……それはもう、たくさんありました(笑)。最初の難関は、日本語でした。ページによっては日本語と英語が混在するバグが発生するなど、大変だったという思い出があります。あとは編集画面のナビゲーションラベルの名称なども日本語として馴染みがある言葉を選びました。これはとても細かなことなのですが、神は細部に宿るとも言いますので、改善し続けています。
西:日本語化はローカライゼーションをする上で大切ですよね。当たり前のことではあるのですが、すごく大切だと思っています。
植山:素材も大切です。Canva はデザイン用のテンプレートを提供しているのですが、そこに使う写真やイラストは日本人向けにしています。例えば、 女性が映っている写真があるのなら、日本の女性の写真にしないといけない。あとは日本のチラシ! スーパーのチラシって、文字がドーンと出て派手なデザインですよね。そういう日本的なデザインのものをテンプレートとして用意しています。また履歴書も日本向けに用意しました。国内で利用されることの多いJIS規格の履歴書を4種類ほど用意したんです。
西:履歴書のフォーマットは日本ならではですよね。
植山:ローカライゼーションをする際、大切な視点となるのが、日本と他国の文化が違うところを見つけることです。例えば、日本ではほとんどの社会人が名刺を紙で印刷し、持ち歩きますよね。アメリカや僕が住むオーストラリアでは、僕の知る限り紙の名刺を持っていません。私自身、シドニーで働き始めてから名刺を持っていないんですよ。
西:面白い視点ですね。そういえば、Canvaは日本語フォントが豊富です。僕が最初に使っていた頃よりも日本語のフォントが増えた印象です。
植山:そうです、そうです。たくさん増やしました。今では400種類ほどを無料で使えます。でもまだまだ。今後もどんどん増やしていく予定です。
日本ならではの情報発信
西:サービスを日本に根付かせる上で情報発信は大切です。日本ならではの活動を教えてください。
植山:日本の方たちはたくさんの情報を欲しがる傾向にあると思っています。なので情報コンテンツの強化をしています。本国のコンテンツを翻訳して提供するのではなく、日本ユーザーの求めるコンテンツを制作しているんです。
西:noteを使った情報発信にも積極的ですよね?
植山:おっしゃる通りです! noteを選んだ理由なんですが、日本で生まれたサービスを通して発信することが大事だなって思ったんですよね。noteでは、使い方や機能だけでなく日本オリジナルテンプレートを作ったデザイナーのインタビューといった舞台裏まで紹介しています。
西:情報発信はスピードも求められます。
植山:そうですね。スピードを落とさないためにもチーム連携は肝となります。Canva Japanはデザインチームとマーケティングチームの連携がスムーズなので、デザインチームが「新しいテンプレートが出来上がりました!」と連絡すると、マーケティングチームがスピーディーに発信しています。Notionの情報発信について言うと、コミュニティの活動が活発ですよね。Notionは2021年10月に日本語化されましたが、その前から多くのユーザーから愛されていて、ユーザーたちが率先して情報発信しています。なぜそんなに愛されているのでしょうか?
西:愛されている理由は、Notionが自分好みに使えるツールだからだと思っています。Notionは「自分が思い描いていることを実現できる」ことを目指しています。ユーザーがツールに合わせるでなく、Notionがユーザーに合わせる。ユーザーはNotionを自分なりにカスタマイズしてやりたいことを実現しているので、そこが日本語化する前から愛されている理由なのもしれません。
日本のユーザーの声を聞きプロダクトに反映
西:実は日本語化するにあたり、一部のコミュニティの皆さんと協業しました。翻訳した後にコミュニティの方々にレビューをお願いし、フィードバックを受け、Notionらしい文言を変えました。Notionらしい日本語に取り組んだことも、日本のこだわりかもしれません。
植山:Notionを日本語化したことで日本のユーザーから、どんな反応がありましたか?
西:チームや会社で使うようになったり、人に薦めやすくなったという声があり、日本のマーケットを拡充できたかなと思っています。実際に、ユーザー数も着実に増え、企業からの問い合わせが増加しました。それに伴いユーザー層も変化したように感じています。一部の高感度層から、より幅広い層にユーザーが普及したのではないかと。そして日本のユーザーが喜んでいることが何より嬉しいです。
植山:共感します。Canvaも日本語化したことで、日本のユーザーの方々に喜んでいただけていることを肌で感じています。先ほど申し上げたように、日本語のフォントを増やしたり、日本向けのデザインのテンプレートを増やしたりしてきました。引き続きCanvaをより良くしていこうと思います。実は先日、Canvaをどのように改善したらいいかと僕のTwitter上で質問し、多くの方たちから素敵な回答をいただきました。今はいただいた内容をスタッフに共有し、実現に向けて進めています。
西:Canvaがどう進化していくかを想像すると、楽しみになってきました。
植山:日本ユーザーに特化したサービスや情報発信の姿勢を見た各国のオフィスからも、良い反応を得ています。日本オフィスのやり方を真似したいから資料を共有して欲しいと問い合わせが来ていて、最終的には、全世界のCanvaのビジネスの進め方が日本流になるんじゃないかな(笑)。
西:面白いですね。具体的な内容はここでは言えませんが、Notionでも日本発信で色々とやっていきたいと思っています。
対談の第2回と第3回も間もなくこちらのブログで公開されます!
またCanvaの日本公式noteでは、「Notionのローカライゼーション」に関する記事が公開中です。是非こちらもあわせてお読みください! ⇒