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ノーベル文学賞受賞などの輝かしい足跡を誇り、“アメリカ近代劇の父”と称される劇作家、ユージン・オニール。DISCOVER WORLD THEATREの第10弾には、この偉大なる劇作家の遺作となった『夜への長い旅路』が登場します。オニール自身の青春時代における、凄惨な家族の姿を描いた自伝劇といわれる本作は、彼の死後、妻によって発表され、4度目のピュリッツァー賞を獲得し、アメリカ最高の作家とされるオニールの評価を決定付けました。戯曲冒頭に付けられた妻への献辞の中で、オニールは本作を「血と涙で綴られた、古い悲しみの劇」と記しています。悲劇的な家族の歴史を、人間の真実を突く普遍のドラマに昇華させ、自らの人生に“赦し”を与えたオニールの代表作でもあります。この演出を手掛けるのは、シアターコクーンでの舞台作りは4作目となるイギリス演劇界のトップランナー、フィリップ・ブリーン。人間を深く見つめ、物語を繊細に紡ぎ出すことで定評のあるフィリップが、実力派俳優5人を迎えて、オニールの最高傑作に挑みます。

ストーリー

1912年、夏のある日の朝。俳優ジェイムズ・タイロンの別荘の居間で、家族が朝食後の団欒を楽しんでいる。しかしその会話から徐々に明らかになるのは、彼らの実像、家族を覆う暗い陰である。父ジェイムズは異常な吝嗇家であり、母メアリーは麻薬の常習者、長男ジェイミーは酒と女にだらしない放蕩息子で、次男エドマンドは肺を病んでいる。メアリーは昔、幼い息子ユージンを亡くしたことで罪の意識にさいなまれていた。その後にエドマンドを出産し、産後の病気をきっかけにモルヒネ中毒に陥ってしまったのだ。家族の確執が次第にあぶり出されていく中、再びモルヒネに手を出したメアリーが幻覚に襲われ始めて……。