※ この記事はDerek YuさんがSpelunky(Xbox 360版)を開発していた頃の2010年の9月17日に書かれた記事、「Finishing a Game」の和訳です。

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私が今制作しているゲームが完成に近づくにつれて、プロジェクトを完成させること自体について全般的によく考えるようになりました。才能ある開発者の中には、ゲームの完成までこぎつけるのに苦労している人がたくさんいるようです。実際、私自身も未完成のゲームを多く残してきました… 誰もがそうだと思います。すべてのプロジェクトがうまくいくわけではなく、要因も様々です。しかし、もしあなたが多くの可能性を秘めたゲームプロジェクトから幾度となく手を引いてしまっているようであれば、一歩引いてみて、なぜそうなってしまうのかを考えてみる価値はあるかもしれません。

誰しもゲームやコミック、映画などを鑑賞してみて、こう思ったことが一度はあるでしょう:「自分ならもっといいものを作れるね!こんなの過大評価されてる」と。しかしまずは一歩引いて、少なくとも彼らはそのプロジェクトを完成させられていて、自分にはそれができていないということに気づくことが重要です。だからこそ、彼らは自分よりも優れているかもしれないし、自分にはない評価を得ているのかもしれません。プロジェクトを完成させることをただの「制作の一過程」としてとらえるのではなく、ある種の「スキル」のように考えてみると、それは改善できる技術であり、またどのような習慣や思考プロセスがあなたの邪魔をしているかに気づくことができるかもしれません。

私はゲーム作りに正しい方法があるとは思っていません。ゲーム作りはクリエイティブなものですから、どこかで破れないルールはありません。しかし、この問題を他のゲーム開発者と議論してきた者としては、誰もがどこかの時点で陥ってしまう精神的な罠があると感じています。その罠に気づくことが、何かを完成させるための大きな第一歩になります。(ここだけの話ですが、これらのアイデアを体系化することは私のやり方の一つでもあります。)

というわけで、ここではゲームを完成させるための15のヒントをご紹介します。

1.可能性のあるアイデアを選ぶ

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私自身が興味をそそられるゲームには3種類あります。作ってみたいゲーム、作ったことにしたいゲーム、作るのが得意なゲーム、の3つです。

作ってみたいゲームとは、その制作過程自体が楽しそうなゲームです。試行錯誤しがいのありそうなゲームデザインであったり、動かしてみたいキャラクターがいるとか。

作ったことにしたいゲームとは、その制作過程よりも、その結果自体に興味があるゲームです。例えばそれは、フリーダムなコンセプト(「GTAとファイナルファンタジーと戦略シミュレーションを足し合わせた最強のゲーム」)だったり、あるいは「制作過程はともかく、面白そうなゲーム」などです。

作るのが得意なゲームとは、自分の性格に合ったゲーム、実際に作った経験のあるようなゲームです。例えばそれは、自分が好きなジャンルで、テンポ感や流れを勘で良く理解できているようなものかもしれません。

私の考えでは、最も完成に至る可能性の高いアイデアというのは、この3つのカテゴリーの全てに当てはまり、なおかつ「これを実際に作る時間とリソースがある」という条件を満たしているものだと思います。

2.実際にゲームを作り始める

アイデアを書き溜めているだけではゲーム作り始めたとは言えません。企画書を書いたからといって、ゲームを作り始めたとは言えません。チームメンバーを招集することも、ゲームを作り始めることではありません。グラフィックや音楽を作ることでさえ、ゲームを作り始めることにはなりません。「ゲームを作り始める準備をすること」と「ゲームを作り始めること」は混同しがちですが異なるものです。覚えておいてください:ゲームというのはプレイできるものであり、プレイできるものが存在していない限りは、ゲームを作ってはいません!

つまり、ゲームエンジンを作ったからといって、必ずしもゲームを作り始めたとは限らないということです。これは次のヒントにも繋がります:

3.必要がない場合は、独自の技術を開発しない

自分でゲームエンジンを作ることには利点も欠点もあります。しかし、本当に作らなければならないのか、自問してみてください。あなたがやりたいことは、すでにあるものを用いてでは不可能なのでしょうか?「車輪の再発明」をすることになっていませんか?もちろん、自分でエンジンを作れば、自分の好きなように完璧に仕上げることができます。しかし、正直なところ、エンジンを作り終えてゲーム自体に手をつけれることはどのくらいあるのでしょうか?ゲームよりもエンジンを作ることに全力を尽くしてしまうことはないでしょうか?

私はGame MakerというツールでSpelunkyのオリジナル版を作り、それをベースに後にXbox 360用のリメイク版が作られることになりました。だから、Game Makerのような開発ツールや他の簡略化されたツールを「本物じゃない」などと思ってはいけません。大切なのはゲーム自体なのです。