https://s3-us-west-2.amazonaws.com/secure.notion-static.com/1bacb215-9708-46b8-9a0b-c52c7eccb333/9C41DC5C-7F3D-4098-9E0F-8AC050E4562C_1_105_c.jpeg

近年、ジェンダー、人種、民族、信条など多様なアイデンティティの不均衡を正し、ダイバーシティ(多様性)を重視する動きが世界各地に広がっています。現代アートにおいてもこの10年ほどの間、1950年代から70年代に活動を始め今日まで継続してきた女性アーティストたちに注目が集まっています。「アナザーエナジー展」では、今なお世界各地で挑戦を続ける70代以上の女性アーティスト16名に注目し、その活動に光を当てます。16名の年齢は71歳から105歳まで、全員が50年以上のキャリアを誇ります。また、出身地は世界14カ国におよび、現在の活動拠点も多岐にわたります。彼女たちは、それぞれが置かれた環境や時代が激しく変化し、美術館やアート・マーケットの評価や流行が移り変わるなか、それらにとらわれることなく独自の創作活動を続けてきました。本展では、絵画、映像、彫刻、大規模インスタレーションにパフォーマンスなどの多彩で力強い作品約130点を通して、彼女たちを突き動かす特別な力、「アナザーエナジー」とは何かを考えます。世界が未曾有の事態にある今、これら16名のアーティストたちが確固たる自らの信念を貫き生涯をかけて歩み続けている姿は、私たちに困難を乗り越え、未来に向けて挑戦するための力を与えてくれることでしょう。

https://www.mori.art.museum/files/exhibitions/2020/10/19/AnotherEnergy_01_01.jpg

展示風景「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」

エテル・アドナン

1925年、ベイルート生まれ。詩人、小説家、画家。1960年代からイメージと文章、東洋と西洋、近代と現代をかけ合わせ、大陸間、文化間を行き来する自身の人生が反映された作品を制作。日本文化や、他文化に大きく影響を受けた多様な作品群には、風景、抽象、色彩、文章、記憶や歴史に対する複層的な探求がうかがえる。また、世界的な反戦運動への連帯感を表明するアドナンの、繊細でありながらもはっきりとした政治性が見てとれる。

エテル・アドナン《無題》2018年油彩、キャンバス55×46 cmCourtesy: Sfeir-Semler Gallery, Beirut/Hamburg

https://www.mori.art.museum/files/exhibitions/2020/10/19/AnotherEnergy_02_01.jpg

フィリダ・バーロウ

1944年、英国、ニューカッスル・アポン・タイン生まれ。第二次世界大戦から復興を遂げるロンドンで育ち、美術を学ぶ。絵画と彫刻を制作してきたバーロウは、物質の表面や形の美しさではなく、時間や質量、バランスやリズムなど、物質の状態へ関心を寄せ、崩れ落ちそうな構造体や、立ち上がりそうな形状など、変容しつつある状態の立体作品を制作。コンクリートや集合材、段ボールなど安価な工業用材料を使い、その剥き出しの素材同士が生み出す絶妙なバランス感が、作品に通底している。2017年、第57回ベネチア・ビエンナーレ英国館代表。

フィリダ・バーロウ《アンダーカバー 2》2020年木材、合板、セメント、スクリム(布)、石膏、ポリウレタンフォーム、塗料、PVA(合成樹脂)、キャラコ、鉄サイズ可変Courtesy: Hauser & Wirth展示風景「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」森美術館(東京)2021年撮影:古川裕也

https://www.mori.art.museum/files/exhibitions/2020/10/19/AnotherEnergy_02_02.jpg

アンナ・ボギギアン

1946年、カイロ生まれ。1960年代に政治学を、1970年代にモントリオールで美術と音楽を学ぶ。現在は遊牧民のように世界各地に滞在し、それぞれの地域の歴史、政治、社会状況のリサーチの結果をトランスナショナルなテーマと結びつけ、相互の関連性を探ってきた。ドローイングを切り抜いた紙人形劇のようなインスタレーションは、世界を俯瞰すると見えてくる近代社会の光と影を雄弁に物語る。2012年のドクメンタ13以降、大規模個展や国際展への参加が続く。

アンナ・ボギギアン《制度 vs 大衆》2019年展示風景:「正方形、線と定規」パリ国立高等美術学校 2019年撮影:Nicolas Brasseur※参考図版

https://www.mori.art.museum/files/exhibitions/2020/10/19/AnotherEnergy_02_03.jpg

ミリアム・カーン

1949年、スイス、バーゼル生まれ。1970年代に反核運動などの社会的動向に影響を受け、アーティストとしての活動を始める。力強い線描を特徴とする木炭のドローイングや色彩豊かな油彩は、差別や暴力などの社会問題、戦争、ユダヤ人女性である自身のアイデンティティと深く関わっている。2017年にはドクメンタ14に参加。2019年にはベルン美術館、ハウス・デア・クンスト(ミュンヘン)、ワルシャワ近代美術館の3館を巡回する大規模個展を開催。

ミリアム・カーン《美しいブルー》2017年5月13日油彩、キャンバス200×195 cm所蔵:WAKO WORKS OF ART(東京)

https://www.mori.art.museum/files/exhibitions/2020/10/19/AnotherEnergy_02_04.jpg