第1条(目的) この要綱は、土地収用法その他の法律により土地等を収用し、又は使用することができる事業に必要な土地等の取得又は土地等の使用に伴う損失の補償の基準の大綱を定め、もつてこれらの事業の円滑な遂行と損失の適正な補償の確保を図ることを目的とする。
第2条(定義等) この要綱において「土地等」とは、土地、土地収用法第5条に掲げる権利、同法第6条に掲げる立木、建物その他土地に定着する物件及び同法第7条に掲げる土石砂れきをいう。 2 この要綱において「土地等の取得」とは、前項に掲げる土地、物件及び土石砂れきの取得並びに同項に掲げる権利の消滅をいう。 3 この要綱において「土地等の使用」とは、第1項に掲げる土地及び物件の使用並びに同項に掲げる権利の制限をいう。 4 この要綱において「土地等の権利者」とは、土地等の取得又は土地等の使用に係る土地等に関して権利を有する者、第1項に掲げる土石砂れきの属する土地に関して権利を有する者及び当該土地、当該権利の目的となつている土地又は当該土石砂れきの属する土地にある物件に関して権利を有する者をいう。 5 この要綱において「権利」とは、社会通念上権利と認められる程度にまで成熟した慣習上の利益を含むものとする。
第3条(補償額算定の時期) 土地等の取得又は土地等の使用に係る補償額は、契約締結の時の価格によつて算定するものとし、その後の価格の変動による差額については、追加払いしないものとする。
第4条(補償を受ける者) 損失の補償は、第五章に規定する場合を除き、土地等の権利者に対してするものとする。
第5条(個別払いの原則) 損失の補償は、各人別にするものとする。ただし、各人別に見積ることが困難であるときは、この限りでない。
第6条(損失補償の方法) 損失の補償は、原則として、金銭をもつてするものとする。 2 土地等の権利者が金銭に代えて土地又は建物の提供、耕地又は宅地の造成その他金銭以外の方法による給付を要求した場合において、その要求が相当であり、かつ、真にやむを得ないものであると認められるときは、事情の許す限り、これらの給付を行なうよう努めるものとする。
第7条(土地の補償額算定の基本原則) 取得する土地(土地の附加物を含む。以下同じ。)に対しては、正常な取引価格をもつて補償するものとする。 2 前項の場合において、当該土地に建物その他の物件があるときは、当該物件がないものとしての当該土地の正常な取引価格によるものとする。 3 第1項の場合において、土地を取得する事業の施行が予定されることによつて当該土地の取引価格が低下したと認められるときは、当該事業の影響がないものとしての当該土地の正常な取引価格によるものとする。
第8条(土地の正常な取引価格) 前条の正常な取引価格は、近傍類地(近傍地及び類地を含む。以下同じ。)の取引価格を基準とし、これらの土地及び取得する土地の位置、形状、環境、収益性その他一般の取引における価格形成上の諸要素を総合的に比較考量して算定するものとする。 2 前項の場合において基準とすべき近傍類地の取引価格については、取引が行なわれた事情、時期等に応じて適正な補正を加えるものとする。 3 地代、小作料、借賃等の収益を資本還元した額、土地所有者が当該土地を取得するために支払つた金額及び改良又は保全のために投じた金額並びに課税の場合の評価額は、第1項の規定により正常な取引価格を定める場合において、参考となるものとする。 4 第1項の規定により正常な取引価格を定める場合においては、一般の取引における通常の利用方法に従つて利用し得るものとして評価するものとし、土地所有者がその土地に対して有する主観的な感情価値及び土地所有者又は特定の第三者がその土地を特別の用途に用いることを前提として生ずる価値は、考慮しないものとする。
第9条(所有権以外の権利の目的となつている土地に対する補償) 土地に関する所有権以外の権利の目的となつている土地に対しては、当該権利がないものとして前二条の規定により算定した額から次節の規定により算定した当該権利の価格を控除した額をもつて補償するものとする。
第10条(土地に関する所有権以外の権利の補償額算定の基本原則) 消滅させる土地に関する所有権以外の権利に対しては、正常な取引価格(一般的に譲渡性のないものについては、土地の正常な取引における当該権利の有無による土地の価格の差額)をもつて補償するものとする。 2 第7条第3項の規定は、前項の場合について準用する。
第11条(地上権、永小作権及び賃借権の正常な取引価格) 地上権、永小作権又は賃借権に係る前条の正常な取引価格は、近傍類地に関する同種の権利の取引価格を基準とし、当該同種の権利の目的となつている土地及び消滅させる権利の目的となつている土地の価格並びに当該同種の権利及び消滅させる権利に係る地代、小作料又は借賃、権利金、権利の存続期間その他の契約内容、収益性、使用の態様等を総合的に比較考量して算定するものとする。 2 第8条第2項から第四項までの規定は、前項の規定により地上権、永小作権又は賃借権の正常な取引価格を定める場合について準用する。
第12条(使用貸借による権利に対する補償) 使用貸借による権利に対しては、当該権利が賃借権であるものとして前条の規定に準じて算定した正常な取引価格に、当該権利が設定された事情並びに返還の時期、使用及び収益の目的その他の契約内容、使用及び収益の状況等を考慮して適正に定めた割合を乗じて得た額をもつて補償するものとする。
第13条(占有権) 占有権に対しては、補償しないものとする。
第14条(建物等の取得に係る補償) 取得する建物その他の土地に定着する物件(以下「建物等」という。)に対する補償については、第一節に規定する土地の取得に係る補償の例による。
第15条(建物等に関する所有権以外の権利の消滅に係る補償) 消滅させる建物等に関する所有権以外の権利に対する補償については、前節に規定する土地に関する所有権以外の権利の消滅に係る補償の例による。
第16条(土石砂れきの取得に係る補償) 取得する土地収用法第七条に掲げる土石砂れきに対しては、正常な取引価格をもつて補償するものとする。 2 前項の正常な取引価格は、近傍類地に属する土石砂れきの取引価格を基準とし、これらの土石砂れき及び取得する土石砂れきの品質その他一般の取引における価格形成上の諸要素を総合的に比較考量して算定するものとする。
第17条(漁業権等の消滅に係る補償) 消滅させる漁業権、入漁権その他漁業に関する権利(以下「漁業権等」という。)に対しては、当該権利を行使することによつて得られる収益(漁業粗収入から漁業経営費(自家労働の評価額を含む。)を控除した額をいう。)を資本還元した額を基準とし、当該権利に係る水産資源の将来性等を考慮して算定した額をもつて補償するものとする。
第18条(鉱業権等の消滅に係る補償) 消滅させる鉱業権、租鉱権、温泉を利用する権利又は河川の敷地若しくは流水、海水その他の水を利用する権利(以下「鉱業権等」という。)に対しては、一般的に譲渡性のあるものについては正常な取引価格をもつて、その他のものについては、当該権利の態様及び収益性、当該権利の取得に関して要した費用等を考慮して算定した額をもつて補償するものとする。
第19条(土地の使用に係る補償) 使用する土地(空間又は地下のみを使用する場合における当該土地を除く。以下この条において同じ。)に対しては、正常な地代又は借賃をもつて補償するものとする。 2 第7条第3項の規定は、前項の規定により正常な地代又は借賃を定める場合について準用する。 3 第1項の正常な地代又は借賃は、使用する土地及び近傍類地の地代又は借賃に、これらの土地の使用に関する契約が締結された事情、時期等及び権利の設定の対価を支払つている場合においてはその額を考慮して適正な補正を加えた額を基準とし、これらの土地の第8条の規定により算定した正常な取引価格、収益性、使用の態様等を総合的に比較考量して算定するものとする。
第20条(空間又は地下の使用に係る補償) 空間又は地下の使用に対しては、前条の規定により算定した額に、土地の利用が妨げられる程度に応じて適正に定めた割合を乗じて得た額をもつて補償するものとする。 2 前項の場合において、当該空間又は地下の使用が長期にわたるときは、同項の規定にかかわらず、第8条の規定により算定した当該土地の正常な取引価格に相当する額に、当該土地の利用が妨げられる程度に応じて適正に定めた割合を乗じて得た額を一時払いとして補償することができるものとする。