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目次

前提

本レポートではSolana上で展開する予定のUXD Protocolの概観を行います。UXD ProtocolはUXDというステーブルコインを発行しますが、ステーブルコインの生成手法がEthereumのDAI(Maker)やLUSD(Liquity)、あるいはUST、AMPLとは異なっており、Solana上のデリバティブを利用してUSDにペッグされるステーブルコインを発行します。創設者は稲見建人氏で、UXD ProtocolはAlameda Research、Multicoin Capital、Solana Foundation等から資金調達を行っています。MulticoinによるUXD評価のレポートはこちらです。

公式サイト:https://uxd.fi/ ホワイトペーパー:https://uxd.fi/static/media/whitepaper.7be6354b.pdf Twitter:https://twitter.com/UXDProtocol

デルタニュートラルとは

UXDはトレーダー界隈でデルタニュートラルと呼ばれている手法を使って発行されます。一般にこの界隈におけるデルタニュートラルとは、BTCを担保にBTCをショートすることで、BTCの値動きに対してニュートラルなポジションを取ることを指します。ここではBTCの現物を担保に利用しているため、BTCの価格が上昇した場合にはショートポジションの損失は膨れ上がりますが、同時に担保資産としての現物BTCの評価額も上昇しているため清算されない点に注意してください。

デルタニュートラルポジションが脚光を浴びた理由の一つは、Funding Rate(以下FR)の偏りにあります。FRは先物取引においてBitMEXを始めとして、BinanceやFTX、更にはDeFi系のデリバティブプラットフォームにも導入されている概念で、先物市場の価格を現物価格周辺に収束させることを目的に導入されています。

これは無期限契約という満期日の存在しない金融商品が成立するための必要な仕組みです。満期日が存在する場合には、満期時の現物価格にて決済が行われますので、必然的に先物と現物の価格がある一点に収束することになります。満期日が存在しないということは、この必然性を備えた性質を持たないということですから別の仕組みが必要です。そこで、先物価格と現物価格の乖離を拡大させる側のポジションを持っている者から、乖離を縮小させる側のポジションを持っている者に対して支払われる手数料が導入されました。これがFRです。

具体的には現物価格が$1,000のときに先物価格が$1,100の場合、先物価格の方が高いため、先物を売ることで先物価格が下落し、現物価格に近づく(乖離が縮小する)働きがあります。この場合、先物の売り(ショート)ポジションを持っている者に対して、ロングポジションを持っている者からFRが支払われます。乖離が大きければ大きいほどFRが高くなります。FRの支払い頻度はプラットフォームによって異なりますが、1時間から8時間に1回のところが標準的です。

また、このFRには「ショート側がFRを受け取ることの方が多い」という過去データがあります。BTCを担保にBTCをショートし、1年を通してショート側が受け取る手数料が保有しているポジションに対して年利10%換算である場合、BTCをショートすることでBTCの値動きに関係なく、FR分の収益を得ることが可能です。これがデルタニュートラルが注目される最大の理由です。

**Q「ショート側が受け取りではなく支払う場合もあるのか」**あります。年間で均せばショートが受け取っている場合が多いというデータがありますが、特に下落相場において先物価格が現物価格に先んじて下落している場合にはFRがショート側の支払いに傾くこともあります。

UXD Protocolでは保険基金を作成し、ショート側が支払いになっている場合に発生する損失を保険基金の出動によって相殺する予定のようです。この基金はローンチ当初はトークンセールによって調達される資金によって準備され、ローンチ後はFRによって発生する収益の一部によって充当される見込みです。

保険基金が底をついた場合には、UXD Protocolの独自トークンが追加発行され、FRによる損失を補います。つまり独自トークンの保有を検討している人間は、UXDによって発生するプロトコル収益とトークンの追加発行による価値の希釈を天秤にかけて独自トークンの価値を算出することになります。

Makerの収益がDAIの発行者からの手数料によって成り立っているのとは対象的に、UXD Protocolの収益はデリバティブ市場においてロングポジション保有者が支払ったFRを、UXDの保有者と共同で分け合っている点に特徴があると言えるでしょう。