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「鮨 渡利(渋谷区渋谷、店主・渡邉哲也)」は5月、江戸前寿司の包丁さばきなどをデジタル資産「NFT」化した「SUSHI TOP SHOT」の販売を開始した。世界で初めて熟練の職人技という所作がブロックチェーンに刻まれたもので、第一弾の「マグロ」「コハダ」「アジ」「カスゴ」「サクラマス」の5種類に続いて、6月14日には店舗での優待特典などを受けられる限定NFTも発行する。

コロナ禍の逆境の中、技術と文化を多くの人に伝えるための挑戦は話題を呼び、経営者や投資家、アーティストも注目して来店するなど、連日予約が埋まり、話題となっている。NFTとは、ブロックチェーンを用いて特定のデータを世界で唯一無二のものとすることができるデジタル資産技術。国内では著名なVRアーティストのせきぐちあいみ氏の作品が約1300万円で落札されるなど、デジタル絵画や音楽の分野で「NFT」化が新たな経済インフラとして期待されている。今回は「SUSHI TOP SHOT」の発行を進めるプロデューサーの徳永大輔さんと暗号資産やNFTに詳しくアドバイザーを務める仮想NISHIさんにお話を伺った。

仮想通貨SUSHIで売り出した「SUSHI TOP SHOT」は即売り切れの大反響

―― まず5月にSUSHI TOP SHOTが公開されて、反響などいかがだったでしょうか?

仮想NISHI:反響はめちゃめちゃよかったですね。Twitterでもいいねや引用リツイートの数がとても多かったですし、各メディアさんでも大きく取り上げられました。売れた状況というのは、NFTをMint(NFT化する作業)してからほぼ、最終Mintの2分後に完売しました。即売だったので、熱量が高かったと認識しています。

徳永:40個の作品が全部売れたということは非常に喜ばしいと考えています。制作した意図としては、日本の寿司文化の職人技術の伝統とブロックチェーンの最新技術を掛け合わせて海外に訴求したいという思いがあったんですね。なので、例えば作品を見ていただいても、先に英語があって、その後に日本語がある作り方にしています。今回はClubhouseで広まり、国内のユーザーが多かったですが、ものによっては、外国の方に買われ、友達にプレゼントされ国外に渡っていったという事例もありました。ところで、仮想通貨SUSHIというトークンはご存知ですよね?

―― はい。知っています。

徳永:SUSHIトークンを発行しているSUSHISWAPはFuture Fundという海外の会社が運営しているんですが、そこのTwitterが引用リツイートしてくれたり、近年話題のNBA Top Shot (NBAとカナダに拠点を置く「ダッパーラボ」が展開するデジタルカードゲーム。最近では、マイケル・ジョーダンらから3億500万ドル(約335億円)もの資金調達をした)の代表であるロハムさんがSUSHI TOP SHOTについて引用リツイートして下さったり、海外のパワーのあるユーザーに対して響いていることは、自分の中では手応えを感じています。

コロナ禍という逆境に負けない飲食業界の新たな試み

―― 改めて伺いたいのですが、プロジェクトの立ち上げはどういう熱が湧いてきてやることになったんでしょうか? SUSHI TOP SHOTのコンセプトの部分にも関わると思うんですが、やろうとした意図や意義など教えて下さい。

徳永:やっぱり今コロナ禍で飲食店が直面している問題っていうのは大きいんですよね。店頭にお客さんが来なかったり、営業時間も少ない中、お酒がメインのキャッシュポイントでもあるんですけど、それが禁止されているということで、飲食店が飲食以外のところでマネタイズする方法はないかなと模索していました。

あと、コロナ不況が続くことによって、寿司職人が魚をさばく技というのは貴重な技術なんですけれども、そういうのがどんどんなくなってしまうと、技術を保存するだけではなく、上手に利用して新しいビジネスを始めたいという意図がありました。

仮想NISHI:NFT技術の有効性は理解していたので、単純にそれを店に使ったら行けるんじゃないかと。寿司っていうのは日本最強のコンテンツの一つだと思っていて、世界の誰でも知っていますよね。なのでこれを活用していけば世界的にかなり大きなものになるんじゃないのかなと直感で感じたところがあります。

それに先行して知名度の高いNBA Top Shotにあやかることで、すぐ広まるのではないかと。

徳永:勢いのあるNBA Top Shotのオマージュっていうのは狙ってやりましたね(笑)。

飲食店を中心とした仮想通貨のコミュニティ作り、顔を合わせて話せる場所の復活へ

――鮨 渡利さんと大将の渡邉さんの話に持っていきたいんですけど、渡邊さんは店舗を構える前にYouTubeの配信を始め、それがすごい人気で、2020年10月に実店舗、鮨 渡利を開店という流れの非常に珍しいお寿司屋さんです。ですので、デジタルとの相性の良さというのが窺えるんですけど、今回のプロジェクトで渡利さんがジョインするというのは、どちらからの呼びかけだったんでしょうか?

仮想NISHI:こちら側からですね。YouTubeをやっているので大将のITリテラシーが高く、すぐこちらの意図を理解してくれました。

徳永:僕は元々、渡利のECとかを手伝っていたんです。3月28日にSUSHI決済というイベントがそもそもあったんですよ。SUSHIのハーフアニバーサリーを記念して、SUSHI決済で寿司を食べるイベントをやってみたんです。それが結構反響があったということで、僕が銀座渡利のECのプロデュースをする中で、世界中の仮想通貨ユーザーやファンを引き込めるんじゃないかなという意図があったんです。それがいい感触を掴んだので、このコミュニティを盛り上げたいという想いがありました。

同時に、仮想通貨のユーザーには、昔NEM BARとかMONA BARっていう、ファン同士が集まる場所があったんですよ。ただ仮想通貨には冬の時代っていうのがあって、そういう店が全部なくなってしまった。そこで、もう一回界隈の人たちが集まれるような場所を作ろうと思いました。

特に高級寿司のカウンターっていうのは7席でL字型になっているので、少ない人数ですけど顔を見ながら会話ができる。そういう上質なオフ会の場みたいなのを提供したらいいなと思ったんです。コミュニティに対して何か自分にできることをしたいという思いで、多くの人々に楽しんでいただけるようなコンテンツを寿司屋から提供できたらなという思いがありました。

仮想NISHI:店舗限定NFTをもらうためには、SUSHIという日本に上場していないトークンをMetaMask(スマホアプリとしても利用できる仮想通貨ウェブウォレット)に入れて、それをお店に送金しないといけないんですね。ということはSUSHI決済をできる方は、ある程度のブロックチェーンリテラシーが必要なわけなんです。おそらくそれができる方は、ブロックチェーンや仮想通貨の話が十分できる方だと私は考えていました。ある程度来ているお客さんたちの質を保った状態で、仮想通貨のファンが集まれる場所を東京に作りたかったという思いがあり、私は渡利を応援しています。

―― SUSHI TOP SHOTの中身についてより詳しくお伺いしたいんですけれども、まずウォレットにお金を入れて、仮想通貨でSUSHI決済を行って、その後は現実的にはどういうユーザーの動きになるんでしょうか?

徳永:まずSUSHIというのは仮想通貨です。僕らが作っているものじゃなくて、すでに流通しているものなんですね。それを実店舗で実際に使っていただいて、SUSHI決済をしていただいた方に関しては、今年の6月14日から来店者用のNFTを配っています。

それとはまた別で、SUSHI TOP SHOTは5月22日に第一弾を販売していて完売しています。

仮想NISHI:まず、OpenSeaという海外のNFT取引所で、SUSHI TOP SHOTを売りました。それの色違いのレアなSUSHI TOP SHOT、つまり限定SUSHI TOP SHOTを来店された方にプレゼントしています。同時に、銀座渡利会員券NFTっていうものを合わせてプレゼントします。SUSHI決済をした来店者にはその2枚をプレゼントするという形になっていまして、この2つとも時期毎に寿司ネタを変えています。種類を変えてコンプリート欲を喚起し、来店リピーターを増やそうとしています。毎月違うSUSHI TOP SHOTを配布することで集めるユーザーも毎月来店が楽しみになるわけですね。

―― それはもらった人はスマホとかで分かるわけですか?

仮想NISHI:支払いをしたウォレットにNFTが直接届きます。決済の際にアドレスをいただくので、そこに送付いたします。ウォレットの中を見れば入っているかどうかはすぐに確認することができます。

徳永:基本的にSUSHI TOP SHOT はウォレットで管理するものと考えて下さい。それをOpenSeaなどのプラットフォームを通して見ることができます

―― 1回目で完売ということでしたけど、販売規模はどうでしたか? 客単価など。

徳永:初版は40枚発行しています。5種類を8枚ですね。これに関しては値段は0.02イーサ、約500円と考えて下さい。約500円で販売して、これが1時間で売れたという感じです。

しかし、安く売るということにも狙いがありました。まず最初にお話ししたように、コミュニティに貢献したいという気持ちが根底にあったので、あんまりここで儲けようとしていません。

それよりもむしろ、多くの人が手に入れやすいようなものを作り出して、それを気軽に贈り合ったりだとか、何かの支払いにそれを配ることによって、配った人同士のコミュニティを形成したり、渡利という寿司屋の空間をハブにして人と人とのつながりを生みたいという考えがあったんです。

なので、多くのNFTが現在、写真1枚撮って1イーサ、約25万円だったりとかそういう値段で設定している中で、逆にその裏を行くような低価格な値段で設定させていただいております。

国内NFT取引所「Nanakusa」とのコラボも予定

仮想NISHI:実は7月にはnanakusaというマーケットプレイスとのコラボを計画しているんです。

徳永:今NISHIさんが言っていたnanakusaっていうOpenSeaの国内版みたいなプラットフォームがあって、そことコラボして、7月から新しいシリーズを作る予定です。

nanakusaとSUSHI TOP SHOTでコラボにはいろいろな相乗効果が期待できます。nanakusaというプラットフォームは海外進出を狙っているわけですが、世界に向けて訴求していくためには強いアーティストがいたりだったりとか、何かしらのフックが必要です。そういうコンテンツとしてSUSHI TOP SHOT という武器を活用していただく予定です。

日本の寿司という文化、日本でしか生み出されないものをちゃんとnanakusaの中にコンテンツとして作ることによって、海外に進出してもらえるきっかけになってもらいたいと思うんです。

この事例からも分かるように、日本のNFT業界は黎明期の時期だと思っているんですよ。そこのコミュニティを豊かにして、みんなで協力して海外に出て行ってどんどん成長するような生態系を作りたいと思っているので、7月にやるnanakusaとの提携はその布石と言っても過言ではありません。

仮想NISHI:nanakusaのプラットフォームはより購入しやすくできているので、前回よりも皆さんの手に行き届くようにやりたいと思っています。

寿司職人の技術の継承と発信

―― 寿司職人の技術をNFTにすることの意義についてどうお考えですか。

仮想NISHI:職人の技というのは、今まで門外不出だったものを、NFTにすることによって、欲しい人だけが値段を払って買うっていうことになります。ひとりひとりの技術という希少な「本物」を入手することが出来るという点は、NFTの本分に近いような気がしています。

同時に、NFT化することによって、半永久的にその技術を保存することができるということで、職人の文化継承が可能となります。加えて、欲しい人に届けられるというところがメリットではないと思います。

あとは寿司の場合、海外で独自の変化をしていますので、日本の寿司の本流はこうだというような物を海外に伝えるときに非常に有効だと思いました。

本場の職人さんの寿司捌きっていうのは、文化的に素晴らしいものなので、伝統をNFT化して流通するというのはいい発想だと思っています。

徳永:NFTのイノベーションって何かというと、デジタルデータに希少性を持たせて価値を担保する物だと思います。NFTの本分に非常にかなったものだと自負しています。なので、そういうプロジェクトが分かる人に響いてくれると嬉しいなと思っています。

―― NISHIさんは今後の日本のNFT業界や暗号資産でのユーザーの動きとか、その辺はどう見ていらっしゃいますか?

仮想NISHI:まず、仮想通貨自体は直近では価格が下がりまして、その余波でちょっと、私のTwitterのインプレッションとかも少し落ちています。しかし、NFT市場は、相変わらず活況が続いているということで、仮想通貨の激しい値段の上下とは関係なくNFTは拡大していくのかなというふうに予想しています。

特に夏にかけて大企業が続々とNFT市場に参加すると聞いています。米国西海岸では今年の冬に流行し始めましたが、日本はそれにちょっと遅れて盛り上がっていくのではないかと思っています。日本はアニメ、マンガ、ゲームなどのコンテンツ大国でありますのでアNFT市場は広がっていく土壌が十分にあると考えています。その中でSUSHI TOP SHOTが世界初の飲食店とコラボした、NFTとして地位を確立し、できれば他の飲食店業にも広がってほしいなと思っております。

私たちがやりたいことは、「飲食店」が食べ物をお客様お出しして買ってもらうこと以外の形で、マネタイズや仮想通貨を保有する世界中のお客様にアプローチできるという事例を作りたいと考えています。

これは日本経済の、特に厳しい外食産業への活性化にこれはつながっていくことなので、ぜひSUSHI TOP SHOTが走っていって、他のところがついてきてくれる形になってくれるとありがたいです。

徳永:国内をぶっ飛ばしてグローバルに広がっているという、なかなかない事例なので、今の飲食業界で苦境に立たされている皆さんにも勇気を与えるきっかけになると嬉しいと思っています。