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目次

NFTプラットフォームの考え方

これまで見てきたリアルアートとNFTアートの分析と対比を踏まえ、関係者にとって望ましいNFTプラットフォームのルール(利用規約)について検討したいと思います。

基本的な視点

まず、これまでの「リアルアート」と「NFTアート」についての検討結果を整理すると、以下のようになります。

「NFTアート」の創作者、保有者、プラットフォーマーのそれぞれの利害を踏まえた利用規約等の条件の策定

上記を踏まえると「NFTアート」の「保有者」が、「NFTアート」を自由に利用するためには、「NFTアート」の著作権自体を取得するか、著作権者から「NFTアート」の利用許諾を取得するか、のいずれかの方法を採る必要があります。 しかし、「NFTアート」の創作者の立場からは、著作権自体を譲渡することは、創作者が「NFTアート」作品について持つ重要な権利を永久に失うことになるため、きわめて慎重になるのが実情です。また、譲渡の一回性から、必然的に対価が高く設定されることにもなります。

他方で「NFTアート」の「保有者」の立場からは、「NFTアート」を享受する、他人に「NFTアート」を享受させる(展示する)、他人に「NFTアート」を譲渡する等、想定している具体的な利用方法が可能になればよく、著作権自体を取得する必要までは求めていないと考えられます 1

そうすると、「NFTアート」の「保有者」は、著作権者から「NFTアート」の利用許諾のライセンスを取得するように権利処理する方法が現実的になります。しかし、抽象的に「ライセンス」というだけでは、権利の内容はまったく決まりません。契約で具体的な内容を定めて、初めてライセンシー(ライセンスを受けた者)が何をできるのか(何をすることを許されているのか)が決まります。すなわち「NFTアート」の保有者が、「NFTアート」をどう利用できるかは、著作権者との取り決め次第ということになります。

したがって、「NFTアート」の創作者や保有者、さらには「NFTアート」を取引するプラットフォーマーの利害を踏まえ、どのような利用態様・支分権侵害が想定されるかを念頭において、利用規約等の条件を定める必要があります。たとえば、「NFTアート」の購入者が「展示スペース」で「NFTアート」を展示し、第三者が当該「NFTアート」にアクセスすることを認めるのか、創作者やプラットフォーマーが対価を取ったうえで一定の範囲で商業利用目的の複製を認めるのか、「NFTアート」の複製や改変まで許容するのか等は重要なポイントだと考えられます。

「NFTアート」の著作権者、購入者の立場から考える望ましい規律

それぞれの関係者についてみると、「NFTアート」の著作権者Aの立場からは、「NFTアート」はブロックチェーン技術により取引を追うことができるという特質があるため、「リアルアート」では技術的に困難であったライセンス条件の履行の管理をすることが可能となります。

また、「リアルアート」では実現していない「追及権」を補う、二次流通における対価を受け取る仕組みを構築できる可能性があります。もちろん、「追及権」(やこれに類似した仕組み)はあくまで「NFTアート」が、安定的に流通して初めて実質的な意味を持つことになるため、流通性とのバランスに配慮する必要があります。そうすると、著作権者Aの立場からは、譲渡対価の一部を含む利用対価の支払いを条件として一定の利用を認める方向で「NFTアートプラットフォーム」を制度設計することが望ましいことになります。

他方で、「NFTアート」の購入者B、C、Dの立場からは、交渉のコストが低下し、予測可能性、流通性を高めるために、「NFTアートプラットフォーム」で統一的に設定された利用条件に従えば、個別に著作権者Aの同意を逐一取りに行く必要がない仕組みが望ましいことになります。

また、「NFTアート」の購入者B、C、Dの立場からは、著作権者Aが「NFTアート」の著作権を第三者に譲渡したとしても、新しい著作権者と購入者のライセンス関係が変動せず、利用に影響を及ぼさないことも重要な要素といえます。

最後に、ライセンス条件を契約で合意したとしても、契約条件の履行が何らかのプログラムによってライセンス条件の範囲でしか動作しない仕組みを技術的に導入しない限り、従前の「リアルアート」同様、著作権の管理は必要となります。したがって、著作権者Aと購入者の間で何らかのライセンス契約関係が発生し、これによって規律されていることが望ましいことになります。

「NFTアート」の著作権者の利益と「NFTアート」の流通性を調和させるための基本的な枠組み

以上の視点を踏まえ、プラットフォームでの取引を前提とし「NFTアート」の著作権者の利益と「NFTアート」の流通性を調和させるための基本的な契約の枠組みをいくつか検討します。 まず、1つの方法として、BからC、CからDにNFTアートを譲渡する際には、譲渡先に対して、ライセンスを許諾するように、利用規約で規定することが考えられます 2。BからCに「NFTアート」が移転する場合、著作権者AからBに対し、Cへのサブライセンスが許可されていれば、BからCにライセンスを付与することで、Bと同じ方法で「NFTアート」を利用することは可能となります。そして、以後の譲渡でも、同様にライセンスを付与していけば、「NFTアート」の安定的な流通を確保することができるように見えます。