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600万円の値段がついたイラスト「K-chan “N“」

様々なクリエイターが参加し、現在ホットワードとなっているNFT(非代替性トークン)。 【画像】『北斗の拳』のNFTアートも登場しています そのNFTアートの市場に、「ポケットモンスター」シリーズや『ポケモンカードゲーム』の公式イラストなどで知られるさいとうなおきさんが参加。出品した作品が13.69 ETH(約600万円)で落札されたことを報告した。

そもそもNFTとブロックチェーンとはなんなのか?

NFTとはノン・ファンジブル・トークンの略称で、ビットコインなどの暗号通貨と同じく「ブロックチェーン」という技術を活用し、デジタルデータにおける「唯一性」を担保する仕組みのこと。 ちなみに、ブロックチェーンは証明と記録が暗号に蓄積され、その蓄積が改ざんを防いでくれるという仕組み。 暗号通貨などの例で言えば、AさんとBさんが暗号通貨を取引を行ったとする。そうすると、その後Bさんが誰かと取引をした際に、そのデータは「Aさんが〇〇円分の暗号通貨を所有していて、〇〇円分をBさんと取引した」という記録も込みで鎖のように連なる形で暗号が作成されていく。 そうなると、誰がデータを所有していたかは計算で特定と証明ができ、後から一部、特に最初の所有者(=出品者)を改ざんしようとすると、その後に行われたすべての取引のデータを改ざんしないとすぐに改ざんが行われた箇所がバレてしまう。 ブロックチェーンの詳しい仕組みについては、データサイエンスVTuber アイシア=ソリッドさんの解説動画が非常にわかりやすいため、そちらを是非見てみて欲しい。 上記の性質によって、ブロックチェーン技術が用いられているNFTアートは、「誰がその作品を出品したのか」が非常にわかりやすくなっている。 そのため、例えば画像であれば右クリックして「名前を付けて保存」してしまえば簡単に複製し、他人が自分のものだと言い張れてしまうデジタルデータに唯一性を担保できるようになっている。

さいとうなおきがNFTに参戦した理由

さいとうなおきさんは、『ポケットモンスター サン・ムーン』のトレーナーデザインなどをはじめとした「ポケモン」シリーズ、『ポケモンカードゲーム』の公式イラストなどで知られるイラストレーター。 自身の活動の幅を広げるだけでなく、イラストのテクニックなどの普及などにも尽力しており、YouTuberとしても活動。YouTubeチャンネルではイラスト術の解説や持ち込まれたイラストの添削、お悩み相談的な動画を中心に投稿している。 今回のNFTアートの出品に際しては、様々な問題がある点、心配がある点には同意しつつも、自身としては「全ての表現者が、自分らしく伸び伸びと表現できる世界」を実現する助けになると感じたと動機を説明。 その理由として、「NFTアートでは作品が取引をされた際は出品者にロイヤリティーが支払われること」から、収入源の増加によってクリエイターが不当な条件で契約にサインをせざるを得ない状況や低賃金での過酷な労働から解放される可能性があるとしている。

NFTの課題と、可能性を切り拓くクリエイターたち

確かにNFTアートは、参入者が増加し市場が活性化する一方で、暗号通貨の計算による環境問題への懸念や、投機対象としての過剰な転売などへの批判の声も多い。 さいとうなおきさんが説明で触れられている中でも、「著作権が基本手元に残る」という点については、NFTアートでデータとして特定が容易なのはあくまで出品者(そのアカウント)であるため、誰がその作品を制作したかまでは追及できないことにも注意したい。 例えば、何らかの企業主催のプロジェクトとして作品を制作し、その企業が出品する場合は、その後その作品が取引された際のロイヤリティの配分などに注意して契約を行う必要がある。 また、あくまでそのデータの出品者が判別できるだけなので、その作品が悪質なコピーを行っていないかなどは、購入者が自身が注意する必要もある。 様々な問題点は孕むが、仮想空間上でアバターを介しコミュニケーションや経済活動を行う「メタバース」事業への参入を発表したREALITY株式会社の代表・DJ RIOさんもKAI-YOUのインタビューにてその可能性に言及。 「(NFTによる金融システムによって)メタバース内で行われる創作活動や販売行為、あるいは何かのサービス業を営むといった様々な経済活動を金銭価値に変換することが可能になります」とメタバース事業でもキーになる革新的な技術であると語っている。 その他にも、現役美大生のSakuga Baud'zさんが主宰をつとめるアニメコンテスト「作画王グランプリ」が、シンガポールに運営拠点を置くNFTのソーシャルプラットフォーム「OURSONG」とタイアップ。 コンテスト参加作品は実際にNFTプラットフォーム上に出品され、スタジオによる大規模なアニメ制作以外に、アニメーターが個人で作成した作品を収益化できる可能性を切り開いている。 懸念事項はあれど、NFTアートはさいとうさんが言うような「全ての表現者が、自分らしく伸び伸びと表現できる世界」の助けとなる可能性を内包しているというのも間違いのない事実だ。 新たな可能性が開かれた今、その可能性をどう転ばせるのか、後の世代にどう渡していくのか、我々ひとり一人が注視していく必要があると言える。

小林優介