アップルとエピックの訴訟はアプリストアの将来を決める裁判として注目を集めていた=ロイター

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【シリコンバレー=白石武志】人気ゲーム「フォートナイト」の開発元である米エピックゲームズが米アップルのアプリ配信の仕組みを不服として訴えていた裁判で10日、一審の判決が下った。米連邦地裁はアップルが独占企業であるとは認定しなかったものの、同社のアプリ課金ルールが反競争的だとして見直しを求める命令を出した。有料アプリから手数料を得るアップルのビジネスモデルに打撃となる可能性がある。

アップルは1日、日本の公正取引委員会と書籍や音楽、動画アプリについて15~30%の手数料を回避しやすくすることで合意したが、アプリ売上高の約7割を占めるゲームについては合意の対象外となっていた。今回の判決はゲームについても見直しを命じる踏み込んだ内容となった。

米カリフォルニア州の連邦地裁のロジャース判事は10日付の判決文のなかで、アップルとエピックの訴訟で対象とした市場の範囲をスマートフォンなど幅広いモバイル端末で売買される「デジタルモバイルゲーム取引」と定義した。その上で「アップルが連邦または州の反トラスト法(独占禁止法)のもとで独占企業であると結論づけることはできない」と述べた。

一方で同判事はアップルがアプリ開発者に対し、アプリの中に外部リンクなどを埋め込んでアップル以外の課金方法に消費者を誘導することを禁じる規約などを問題視した。同判事はこうした規約がカリフォルニア州の法律のもとで反競争的な行為にあたると指摘し、アップルに見直しを命じた。両当事者からの異議が認められなければ、命令は90日後に発効する。

米メディアによると、アップルは訴訟で争われた10項目のうち9項目で自社に有利な判決を引き出すことに成功した。ただ、同社がロジャース判事の命令を受け入れれば、「iPhone」をはじめとするアップル製品向けの有料アプリの開発者はアップルによる配信手数料を回避しやすくなる。

アップルは10日付の声明の中で「本日、裁判所はアップストアが独占禁止法に違反していないという、我々がずっと前から知っていたことを確認した」と述べ、判決に一定の理解を示した。課金ルールの見直し命令に対し異議を申し立てるかどうかは明記していない。

アップルに対しアプリ配信市場そのものの開放を求めていたエピックのティム・スウィーニー最高経営責任者(CEO)は10日、ツイッターに「きょうの判決は開発者にとっても消費者にとっても勝利ではない」と投稿した。「我々はこれからも戦い続ける」とも書き込み、控訴する考えを示唆した。

アップルは20年に有料アプリから200億ドル(約2兆2000億円)前後の手数料収入を得たとみられている。エピックとの訴訟では、アップストアの利益率が8割近くに達することも明らかになった。手数料率が高いという批判は根強く、アップルはエピックとの訴訟で有利な判決を引き出すため、中小のアプリ開発者に対する配信手数料を減額するなど開発者側への譲歩を重ねていた。