「検閲は、支持を失い窮地に陥った政権が取る最後の手段です。それはまるで魔法のように、危機を取り除いてくれるのです。権力は自分たちに耳障りのいいナラティブによって癒しを得、それはメディアや政府機関、シンクタンク、アカデミアによって供給されるのです」── クリス・ヘッジズ

An Intellectual No-Fly Zone: Online Censorship of Ukraine Dissent Is Becoming the New Norm|Alan Macleod|MintPress News

2022年4月25日

translated by Kei Wakabayashi

カリフォルニア州マウンテンビュー発──Googleは世界に向けて不吉な警告を発し、ロシアのウクライナ侵攻に関して特定の意見を容認しないことを、メディア関係者、ブロガー、コンテンツ制作者に向けて通告した。

4月初め、Google AdSenseは、MintPress Newsを含む無数のパブリッシャーにメッセージを送り、「ウクライナでの戦争を事由として、戦争を悪用したり、否認もしくは容認するコンテンツの収益化を一時停止する」と通知した。この通告が述べるには、ここでいうコンテンツは「ウクライナが大量虐殺を行っている、自国の市民を意図的に攻撃しているといった、被害者が自分たちの悲劇に責任があるとほのめかす主張、あるいは被害者を非難する同様の事例などが含まれ、また、これらに限定されない」とある。

この通知は、Googleの子会社であるYouTubeが3月に発した同様のメッセージに基づいており、そこでは「わたしたちはコミュニティガイドラインに基づいて、十分に根拠づけられた暴力事件を否定したり、最小化、矮小化するようなコンテンツを禁止しています。現在、この方針に違反するロシアのウクライナ侵攻に関するコンテンツを削除しています」と語られている。YouTubeは、これらの理由で、すでに1000以上のチャンネルと15,000のビデオを永久削除したとまで語っている。

ジャーナリストで映画監督のアビー・マーティンは、このニュースを深く案じている。「このような流れに世の中が乗っているのは大きな問題です」と彼女はMintPressに語り、こう付け加えている。

これによって被害を受けているのが、外交政策当局に名指しされた人たちであることを考慮するなら、この宣言は許容しがたいものです。複雑な紛争において間違った側に立つと自分の意見を語れなくなり、ソーシャルメディアにおいて立場を失い、資金難に陥ることとなることをテックジャイアントに通達されることなどあってはならないことです。しかし、今日オルタナティブメディアでジャーナリストとして生き延びるためには、彼らに従うしかないのです。

相次ぐこうした禁止措置の最も顕著な犠牲者は、RT Americaのようなロシアの国営メディアであり、そのカタログ全体が世界のほとんどの地域でブロックされている。RT Americaは米国内でも放送がブロックされ、突然閉鎖させられた。

「検閲は、支持を失い窮地に陥った政権が取る最後の手段です。それはまるで魔法のように、危機を取り除いてくれるのです。権力は自分たちに耳障りのいいナラティブによって癒しを得、それはメディアや政府機関、シンクタンク、アカデミアによって供給されるのです」と、ジャーナリストのクリス・ヘッジズは書き、こう付言する

YouTubeはわたしのRTで配信された「On Contact」の6年分の番組を削除しましたが、そこにロシアを扱ったエピソードはひとつもありません。それが削除された理由は明らかです。RTは、ノーム・チョムスキーやコーネル・ウェストといった書き手や、エキスティンクション・リベリオンやブラック・ライブズ・マター、サードパーティ、刑務所廃止運動などの活動家に声をあげる場を与えてきたからです。

さらに小規模の独立クリエイターたちも粛清の対象となっている。「RBNでの配信は、ブチャの虐殺におけるナラティブを否定する配信をおこなった直後にYouTubeで検閲されました。信じられないような検閲が起きています」と、Revolutionary Black Networkのニックは書いている。「わたしが投稿した動画『Bucha: More Lies』もYouTubeの検閲で削除されました。ブチャに関する公式ナラティブは『ブチャはロシアの残虐行為だ。反対意見は許さない!』なのです」と、 チリ系米国人ジャーナリストのゴンサロ・リラも付け加えた

その他のソーシャルメディア・プラットフォームも同様の方針をとっている。Twitterは、ブチャに関する発言をした元兵器査察官スコット・リッターのアカウントを永久停止し、ロシアの侵攻を支持したジャーナリストのペペ・エスコバルのアカウントも停止した。

現在、こうした意見は確かに少数派ではあり、現地の人びとの証言は、虐殺を行ったのは他の紛争でも同様の行為を行ってきたロシア軍であるとしている。しかしながら、米国防総省でさえ、十分な調査が行われるまでは、ブチャの虐殺がロシア軍の犯行であると断定することを拒んでいるのだ。

ブチャの事件以降、どこまでの言論が許容されるのかの線引きは曖昧化され、独立系メディアやコンテンツクリエイターたちに混乱や困惑をもたらしている。「これはウクライナ危機に関する報道を制限することになります。なぜなら、人びとが怖がるようになるからです」とアビー・マーティンは語る。「報復を恐れて、公表しない、報道しない選択をする人が出てくるでしょう。そして、いったんあなたのコンテンツが悪魔化されてしまえば、今度は全動画の削除が待っています」と彼女は言う。