新型コロナウィルスの感染拡大による変化

今回の新型コロナウィルスの感染拡大による大きな変化は、「強制的に多くの人がデジタル教育・オンライン教育に触れたこと」であろう。教育サービスは、その効果が定量的に測りにくい性質が強く、かつ、サービスを選ぶ人が保護者で利用する人が子供であるという構造を持つ。結果的に、サービスを選択する際に保守的な傾向が強くなり、新しいサービスがなかなか選ばれづらく、デジタル教育・オンライン教育の導入が徐々にしか進まない傾向が強かった。

それが、リアルでの学習サービス提供が難しい状況に追い込まれ、子どもたちの学習継続のため、教育のオンライン化が急速に進んでいる。これまでの「食わず嫌いだった人ばかりの世界」から「みんな一度は食べてみた世界」への移行が進んでいる最中である。

筆者が見聞きした範囲の限定的な話になるが、機動力の高い学習塾は、Zoomのようなオンライン会議システムやGoogle Driveのようなファイル共有システムを組み合わせ、オンラインでの授業提供に乗り出している。これまでは目の前の先生が行っていた「教える」という部分を動画に切り替え、その後の1対1の質問対応のみをオンラインで先生が対応する事例も出てきている。

教育は子供の将来に関わる仕事であり、トライ・アンド・エラーを通じて前に進むような取り組みとの相性が必ずしもよくない業界であるが、現在は保護者の理解も得やすい環境であり、多少のトラブルは互いに我慢しながら進むマインドが醸成されていると感じる。中国のようなオンライン教育・デジタル教育先進国の事例を聞いていても、最初は手探りで進め、徐々にベストプラクティスを掘り当てており、日本の学習塾でも急速にオンライン授業の知見が溜まっていくことが期待される。

変わらない学習塾の本質とオンライン完結学習の課題

同時に、学習塾の本質的な価値は変わらないこともこの騒動の中で改めて見えてきている。

その中には、やはり「リアルの場」があったほうがいいものもあり、常にリアルである必要のないものもある。デジタル教育・オンライン教育のメリットも味わった生徒・保護者に選ばれ続けるためには、生徒・保護者のニーズや状況によって、リアルとオンラインを行き来できるサービスへと進化すべきときが来たと言える。

生徒が学習塾に期待するもの

保護者が学習塾に期待するもの