家の近くに「食べ放題」の焼き肉店があります。
「肉でも野菜でもデザートでも、2時間以内なら、いくら食べても3000円!」
って書いてあります。少ないお金でたくさん食べられるなんて、客にとっては最高のコストパフォーマンス、「コスパ」ですよね。毎日毎日、世界中の人々が、少ないコストで大きな結果を得ようと、経済活動をしています。日本もそうです。だからね、10年前、商売の町、大阪市が、この考え方を芸術にも応用しようとしたことがあります。この話を、今日はちょっとするね。
「文楽」をご存じですか。歌舞伎に比べて、ちょっとマイナーかな。文楽とは人形に演技をさせる舞台芸術です。今から300年前の江戸時代に、大阪で生まれました。ユネスコの世界遺産にも登録されています。私、今週、やっと、初めて見に行くことができたんです。
お話のテーマは歌舞伎と大体同じです。恋人や親子の悲しい話やいい話、それから世の中の不思議な話や有名な話などです。場面に合わせた音楽も入ります。違うのは、お話の見せ方、演出ですね。歌舞伎は、西洋のオペラみたいです。役者さんが歌うように、話しますね。一方、文楽では人形が主役です。重さ3キロ、背の高さが1mもあります。大きいですから、動かすのに3人必要です。顔と右手の担当が一人、左手の担当が一人、そして足の担当が一人です。人形の代わりに、話す人がいます。「大夫(たゆう)さん」といって、ナレーションもします。そしてBGMとして三味線を弾く人がいます。人形と大夫さんと三味線、3つのパートが調和してはじめて、ストーリーがリアルに表現されるという、全く「コスパのよくない」総合芸術です。
コスパが悪くても、大阪で生まれた芸術だからということで、大阪市はずっとお金を出してくれていました。けれども、2012年「お客さんが少ない。」「少ないのに増やす努力をしていない。」「そもそも、おもしろくない。」と言って、お金を止めてしまおうとしたんです。確かに、私が見にいったときも、席は半分以上空いていました。今はコロナのせいもあるんでしょうが、当時大阪市は、「もうお金は出さない。それでなくなるのなら、なくなってしまえ!」って言ったんです。当然、みんな怒りました。「300年続いてきた文化に対して、それは失礼だ、ひどすぎる!」その後かえって、観客の数が増えたそうです。
いやあ、私はおもしろかったけどな。それぞれのパートをじっくり見るのに、キョロキョロしてたら、あっと言う間に2時間半過ぎました。1回のチケット代は映画3回分。ん~ちょっと高い。でも、私みたいに、一人でも見ることによって、伝統芸能が守られるなら、行きます。お金をかけてでも、守るべき芸術って、あると思いますから。
「人はパンがなければ生きていけない。しかし、パンだけで生きるべきではない。私たちは、パンだけでなく、バラも求めよう。生きることはバラで飾られなければならない。」
これは、コロナが始まった2020年に、日本のある哲学者が書いた文です。私たちには「バラの花」が必要です。
文楽には専門の学校がありますね。男の人だけですが、申し込みの資格は中学卒業以上23歳まで。2年で3つのパートのどれかを学ぶことができます。ちょうど今、新しい研修生を募集中ですねえ。おお、試験は作文と簡単な面接だけって書いてあります。しかも授業料タダだって、タダ! え!こんなところに最高のコスパ、転がってましたよ~! 全国の15歳の男子、高校受験だけが人生じゃないよ。女子には、能の学校がありますね。こちらは6年です。こっちもタダです! 外国人は…んーと、何も書いてないけど、日本語で作文書けたら大丈夫だと思いますよ。2月末まで受け付け中です。お気軽にどうぞ。お相撲さんに続け~!