関節リウマチ 概要 関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は、全身の関節に移痛と腫脹を示す原因不明の慢性炎症性疾患である。発症時期は40代をピークに広範に分布し、男女比は1:4と女性に多い。日本では70万~80万人の患者がいると推定されている。女性100人に1人は発症するとされ、高齢発症例では男女比が1:1になることもある。 病態生理 関節リウマチの病態は、関節内における滑膜の炎症であり、滑膜細胞の増殖、リンパ球やマクロファージの浸潤、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、IL-6など)の産生が中心となる。これらの炎症性サイトカインは、軟骨や骨の破壊を進行させる。特にマトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP-3)の産生増加が関与する。遺伝的素因に加え、環境的素因も関与していると考えられている。 症状 • 関節症状 最初にみられるのは、起床時の手指のこわばり感。関節の腫脹や圧痛、関節の変形、骨破壊などが進行する。手指・手関節・足関節など左右対称性にみられるのが特徴。関節の腫脹や圧痛は、特にMCP関節やPIP関節、手首、膝、足関節に多い。 • 関節外症状 皮膚、肺、心臓、血管、神経などに炎症が波及することがある(悪性関節リウマチ)。 診断・検査 分類基準(アメリカリウマチ学会・ヨーロッパリウマチ学会 2010年) 表5-1の分類基準により、スコア6/10以上で関節リウマチと分類される。 A. 関節腫脹部位 • 大関節(肩、肘、股、膝、足関節)1か所:0点 • 2~10か所:1点 • 小関節(MCP、PIP、MTP、手首):1~3か所:2点、4~10か所:3点、10か所以上:5点 B. 血清学的項目 • RF(リウマトイド因子)またはACPA(抗CCP抗体)陰性:0点 • いずれか低値陽性:2点 • いずれか高値陽性:3点 C. 炎症反応検査 • CRP正常またはESR正常:0点 • CRP高値またはESR高値:1点 D. 症状の持続期間 • 6週間未満:0点 • 6週間以上:1点 病期分類(スタインブロッカー分類) • Stage I(初期):X線で骨変化なし、骨粗鬆症のみ • Stage II(中等度):軽度の軟骨破壊 • Stage III(高度):骨の破壊、関節変形が存在する • Stage IV(末期):線維性または骨性強直を伴う 関節機能障害分類(アメリカリウマチ学会) • クラス1:通常の生活、仕事、趣味などが可能 • クラス2:通常の生活は可能だが、仕事や趣味などで制限あり • クラス3:通常の身のまわりの動作は困難だが、仕事と趣味に制限あり • クラス4:身のまわりの動作も困難、仕事・趣味も不可 検査 • リウマトイド因子(RF)、抗CCP抗体、CRP、ESR(赤沈)などを測定 • 関節エコーやMRI、X線検査で関節破壊や滑膜炎の評価 • DAS28(28関節の圧痛・腫脹数、CRP、ESR、VASによる疾患活動性スコア) 画像 • 正常な関節と関節リウマチの滑膜炎、骨破壊の模式図 • 関節腫脹や骨破壊のX線写真

関節リウマチの治療 治療の目的と概要 関節リウマチ(RA)の治療は、単に痛みを和らげるだけでなく、関節変形を防ぎ、機能障害を最小限に抑えることが目的です。薬物療法を基本としつつ、必要に応じて手術療法やリハビリテーションも行われます。 薬物療法

  1. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID) NSAIDは関節痛や炎症の軽減を目的として用いられますが、疾患の進行抑制には寄与しません。プロスタグランジン合成酵素(COX)阻害薬が主流です。
  2. 副腎皮質ステロイド薬 炎症や免疫反応を強力に抑える薬です。活動性が高い場合や他の薬剤で効果が不十分な場合に短期間使用されます。慢性期や長期使用は副作用に注意が必要です。
  3. 抗リウマチ薬(DMARD) 疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)は関節リウマチの進行抑制に用いられます。 • csDMARD(従来型):メトトレキサート(MTX)が最も多く用いられ、タクロリムスやサラゾスルファピリジンもあります。 • tsDMARD(分子標的型):新しいタイプの合成薬です。 • bDMARD(生物学的製剤):インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなどの抗TNF-α抗体、IL-6受容体拮抗薬、CTLA-4製剤などがあり、MTXとの併用が推奨されることが多いですが、単独でも使用可能です。 理学療法・作業療法
  4. 物理療法 温熱療法や水治療法、寒冷療法などで痛みや炎症を和らげます。
  5. 運動療法 関節可動域訓練や筋力強化訓練を行い、関節拘縮や変形の予防、筋力低下の防止を目指します。
  6. 作業療法 ADL(日常生活動作)の改善や自助具の導入、関節保護のための指導を行います。
  7. 装具療法 関節の変形予防や矯正、機能改善、固定・支持、疼痛の軽減に用いられます。 手術療法 関節破壊が進行し日常生活に支障が出る場合には、滑膜切除術や人工関節置換術などが行われます。人工関節の耐用年数は約20年とされ、患者の年齢や活動性に応じて適応が検討されます。 妊娠を希望する患者への治療 妊娠中は使用可能な治療薬が限られます。妊娠可能性がある場合は、治療薬の選択や中止について十分な相談が必要です。多くの場合、bDMARDの使用が考慮されます。 予後 関節リウマチの活動性や合併症の有無によって生命予後が左右されますが、動脈硬化性疾患のリスクが高いことが判明しています。