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敗血症と敗血症性ショック 敗血症 敗血症 sepsis とは、感染に対して過剰な生体反応がおこり、組織障害や臓器障害をひきおこす病態のことで、感染症によりもたらされる重篤な状態である。敗血症の語源は、古代ギリシャ語の「腐敗」を意味する septikos からなり、その概念はヒポクラテスの時代から存在していた。1989 年には、敗血症は、感染による全身性炎症反応症候群(SIRS)と定義され、感染症と SIRS を診断することが敗血症の診断基準として広く用いられてきた(▶316ページ)。しかし、感染を起因する全身症状を伴った症候と再定義され、SIRS の項目以外にも多数の項目が診断基準として採用された。さらに 2016 年、敗血症は、「感染症が原因で臓器障害を伴う全身炎症反応」と定義が改められ、臓器障害が加味されることにより、重症度がより反映されることとなった。 敗血症を引きおこす病原体として、おもにブドウ球菌属や大腸菌、レンサ球菌属があげられるが、そのほかのさまざまな感染症が原因となる。敗血症、敗血症性ショックの不適切な治療が行われなければ死亡することもあり、免疫能が低下している場合に多い。 表 3-3 敗血症と敗血症性ショックの定義
1)血液中に病原体が侵入する病態として菌血症(▶316ページ)があるが、菌血症で必ずしも全身症状がみられるわけではない。
り、抗がん薬により好中球が減少していたり、糖尿病などの慢性疾患をもっていたりする65歳以上の高齢者がおこりやすいとされている。また、免疫機能の未熟な1歳未満の乳幼児も、敗血症のリスクが高いとされる。 敗血症では、感染症の結果としての症状に加えて、悪寒戦慄、発熱、発疹、不快感、冷たく湿潤した皮膚、意識低下(混乱や見当識障害)、頻呼吸・頻脈など、発症とともにさまざまな全身症状が急激にあらわれる。 敗血症性ショックは、敗血症が進行した結果でさらに循環不全、すなわちショックを伴うため、死亡リスクが高い。敗血症ならびに敗血症性ショックは致死率の高い病態だが、発熱や呼吸困難などの症状の多くはほかの疾患と同じであるため、早期の鑑別が重要となる。 敗血症は、発熱や低血圧、心拍数や呼吸数の上昇などの身体所見、ならびに検査結果をもとに診断される。診断に用いられるSOFAスコアは、臓器障害を簡便にスコア化・記述することを目的に作成されたものである(▶317ページ)。 SOFAスコアは集中治療室(ICU)内の患者を対象に作成されたため、ICU以外でこの診断基準を用いることは困難な場合が多く、すなわち敗血症を疑うことには適していない。そこで一般病棟や急性期病院外来等で敗血症を疑うためのより簡便なツールとして、qSOFAが考案されている(▶318ページ)。 早期に診断を確定し、抗菌薬の投与とともに、全身管理により血圧の低下とそれに伴う臓器障害の進行を予防する必要がある。