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④ 梅毒 概念 梅毒 syphilis の原因菌である梅毒トレポネーマ Treponema pallidum subsp. pallidum は、細長いらせん状の細菌で、スピロヘータ科のトレポネーマ属に属する。性感染症や経胎盤的に感染し、胎盤を通過することで先天性感染をおこす。 梅毒の症状は時期によって異なり(潜伏性を含めれば4つ)に分かれる。 【1】第1期梅毒 梅毒トレポネーマは粘膜を通じて侵入し、皮下で増殖する。感染のあと約3週間で無痛性硬結や無痛性潰瘍(硬性下疳)が発生する。 【2】第2期梅毒 梅毒トレポネーマがリンパ系や血流へ侵入し、全身へ広がる。通常は感染後、2〜8週で発熱や全身のリンパ節腫脹、ピンク系の発疹、扁平コンジローマ(肛門や性器、口腔、手掌、足底に広がるバラ疹)などを認める。全身性の症状がみられる。まれに、髄膜炎、脳炎、前部ブドウ膜炎、糸球体腎炎、肝障害、難聴、脱毛などをきたす。 【3】潜伏性梅毒 症状が消失した後、無症状で経過する。梅毒トレポネーマが症状を欠いたまま体内にとどまることがある。初感染から1年以上、しばしば20〜30年以上無症状状態が続く。 【4】第3期または晩期梅毒 無治療の梅毒患者のうち約40%で、晩期梅毒を発症する。神経梅毒(動脈炎による若年性の脳梗塞、進行麻痺、脊髄癆)、心血管梅毒(大動脈弁逆流症、うっ血性心不全、大動脈の嚢状動脈瘤)、ゴム腫(皮膚、骨、粘膜)をおこす。 診断 第1期および第2期梅毒では、病変部位から採取した検体の暗視野顕微鏡検査によって病原体を観察することができるが、実施できる施設は限られている。第2期梅毒では、血清学的診断法が主体になる。血清学的検査には、非トレポネーマ検査と特異的トレポネーマ検査の2種類がある。 ※脚注:
非トレポネーマ検査はレアギンとよばれる脂質に対する抗体検査であり、ガラス板法、VDRL法 venereal disease research laboratory(米国性病研究所法)、RPR法 rapid plasma reagin test などの検査法がある。これは梅毒の活動性の指標になるが、生物学的偽陽性をおこすことがある。 特異的トレポネーマ検査は、梅毒トレポネーマに対する特異的な抗体を検査する。これが陽性であるということは、患者が過去に梅毒に曝露されたことを意味するのであり、梅毒の活動性をみるものではない。治療により通常は陰性化しない。 治療 すべての病期において、ペニシリンが第一選択薬である。