アウケアというメディアを運営しており、今回のプログラムの実施主体であるスリーエス株式会社代表の千田(ちだ)と申します。プログラム開始にあたり、我々の考えを明らかにしておいた方が良いと考え、書き記すことに致しました。

■実際に現場を体験しに行く過程で感じた課題ー"介護現場は探しづらい"

私が介護業界での取り組みを開始する際に、まずは現場を知らなければ始まらないので、まずは初任者研修の学校に申し込むと同時に、現場でアルバイトをしようということで、アルバイトをする職場探しを始めました。

その過程でまず感じたのは「介護現場」の探し辛さです。未経験の状況でしたので、当然施設ごとの違いは分からず、インターネットで調べたり、初任者研修の講師の方に教えて頂いても、情報としては入ってくるのですが、その違いを全く認識できませんでした。また家の近くの施設を「〇〇駅 介護施設」「〇〇駅 老人ホーム」と調べて、ホームページに行きついても、どこのホームページも十分な情報が載っておらず、どんな方が働いているのか?何をする仕事なのか?が分からない状況でした。そして「働けるかどうかを考える上で、ちょっと話を聞いてみたい」ということで連絡をしたいと思いながら、ホームページには「面接希望の人は、電話してください」といった記載しかなく、困ることも多くありました。結果的に、ある大手の法人が運営する(介護業界を全く知らない人でも誰もが名前を知っている法人名が付く企業)「有料老人ホームの未経験向け介護業界説明会」に参加することになり、そこから選考プロセスに入ることが出来ました。

■100人の施設長インタビューで分かったことー"ウェルカム感が出せず人手が不足"

また、現場の方に話を聞いてみたいと思い、首都圏の介護施設100施設の施設長とお話をさせて頂くことにしました。どんな仕事をしているのか?どんな課題を抱えているのか?を色々と教えて頂きました。(突然のご連絡にもかかわらず丁寧にご対応をいただいた施設の皆様には、改めて、この場を借りて感謝申し上げます。これは2019年の前半だからこそ出来たことで、今これをやることは感染症対策的に無理だったと感じます。) ほぼ100%の方が仰っていたのが「人材不足」に関する課題でした。また「未経験の方も採用上はウェルカム」という施設が多いことも分かってきました。自分自身が現場を探した時には「未経験の自分に対してウェルカム感は感じなかった」のに、です。

施設側の話を聞くと、これはウェルカムされていないのではなく、何らかの構造により、それが引き起こされているのだと気づきました。私も探す際は、幾つかの採用サイトにも登録し、人材紹介にも登録しました。ただ、もちろんそういったサービスはビジネスとしてやっているので、必ずしも、求職者本位のサービスにはなっていないのだと、利用してすぐ気づきました。電話も何度もかかってきて、かつ、自身の希望(その時は「週3程度働きたい」「パートタイム」という希望でした)に合わない条件(「週5日」「正社員」)を多く推される等、です。そして、求人を検索するとそういったサービスばかりが上位に表示され、困ったものだなと感じたものでした。

そこで、まずはテスト的に、複数の施設にボランティアという形で関わらせて頂きながら、施設の情報発信や、体験という形でまずは気軽に施設/現場のことを知る機会を作る取り組み(旧:介護施設体験ドットコム)をスタートさせました。その取り組みの中で、100人以上の介護職の方々からお話を伺いましたが、介護職の方も同様に施設/現場を探す際に、必ずしも満足のいく形で施設を選べているわけではないことを知る様になりました。

■アウケアを始めて分かったことー"介護の多様性とそれに伴うミスマッチ構造"

20年4月からはアウケアというサービスに名前を変え、試行錯誤を繰り返してきました。多くのことを学びましたが、1つ強く感じているのは、介護業界が非常に多様であるということです。多様が故に、求人を募集する施設もそれを表現できず、また働き手もそれを言語化できず、結果的に分かりやすい条件面のみで決めているという構造でした。

当然、仕事としての介護なので、条件面は重要です。しかし、多様な介護業界において条件面のみで働く場所を選ぶことは、自分自身の大事にしているものと相反するものを強いられた結果として、本来介護という仕事を通じて得られるものが得られなかったり、はたまたバーンアウトしてしまったり・・・多くの方のそういったお話を聞き、問題意識を持ちました。

仕事の特性上、入居施設であれば、24時間365日サービスの提供が求められ、結果、責任感が強く、貢献しようと思えば思うほど、介護職の方が、辞めづらい構造になりがちです。そういった方は、今すぐに転職をする気持ちがない方にはなりますが、そういった方ほど、結果的に、差し迫ってからの転職となり、時間と気持ちに余裕がない中、条件面とタイミングから現場を選んでしまい、結果、合わない現場で、自分自身をすり減らしてしまいます。

■今回のプログラムについてー"タイミングより介護観で選ぶ採用へ"

今回は、タイミングではなく介護観で、ということを打ち出したプログラムになっています。上記の様に今は転職意向はない方でも、出来る限り参加しやすくなる形とし、仮にプログラムに参加した結果、その施設が気に入らなかったとか、良かったけどやっぱり今ではない、と思った形でも、何らかの学びを得ていただける様にしました。

また施設側が大事にしている方針をまとめ、またその施設の介護観を明文化すること、及び、介護職の方にも、その共感度合いを選んで頂くことで、事前に介護観が合わない可能性を減らすプログラムとしました。

その前提として、我々が何度も現場に足を運ばせて頂き、職員の方々の声を聞いていた結果、介護の考え方・介護観が明確な施設のみを、今回は3施設取り上げています。当然、それだけでは合うかどうか分かりませんので、実際の現場を体験して、相互に確かめられるプログラムとしています。(※時節柄、感染症対策は必須なので、参加前の検温やプログラム時の予防、及び、ボランティア保険の加入等の最大限の対応はして参ります。)

是非プログラムの趣旨をご覧いただき、まずはご参加いただければと思います。このプログラムが、介護職の方のサポートになるよう、進めて参ります。