志望理由書や自己推薦書において、「目標(何をしたいか)」の次に来るべきなのが、その目標を持つに至った理由やきっかけの段落です。これは、読み手である大学教員との最初の“接続点”となるパートであり、ここで共感性や納得感を得られなければ、その後の文章は一気に説得力を失ってしまいます。
よくある失敗例は、「目標は立派なのに、その理由が飛躍しすぎているケース」です。たとえば「子どもの貧困をなくす制度をつくりたい」という目標に対し、「高校1年で参加したボランティアプログラムがきっかけでした」とだけ書いて終わってしまうような場合、読み手は「本当にそれだけで?」と疑問を抱きます。
実際は、その前後に多くの気づきや感情の揺れ、個人的な体験があったはずです。それらを省略して唐突に“きっかけ”を語ると、読者には「こじつけ」「偽善的」「作り話」のように映ってしまうのです。
大切なのは、“段階的な気づき”を丁寧に描くことです。
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たとえば以下のように、自分の日常の中で小さな違和感や興味を持った瞬間から始め、それがどう発展していったのかを一段一段、階段をのぼるように描写していく必要があります。
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自分はHSP気質で音に敏感。拍手や大声に驚いてしまう。
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そんな自分がニュースで紛争地域の子どもたちが空爆の音に日常的にさらされている様子を見て衝撃を受けた。
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自分は些細な音でも日常が崩れるのに、彼らの恐怖はどれほどのものかと思いを馳せた。
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そこから心理的ケアや紛争下における教育・支援に関心を持つようになった。
良い構成例②(文化・宗教系)
小さい頃から白雪姫の物語が好きだった。
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調べていく中で、物語の背景に宗教や時代の価値観が影響していることを知り、驚いた。
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「物語や文化は時代の写し鏡である」と感じ、社会と思想を学ぶことに興味を持った。
良い構成例③(経営・ビジネス系)
家が老舗旅館を営んでいる。
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両親から経営が苦しいと聞き、何が原因なのかに興味を持った。
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あるときコンサルタントの方が話していた“集客導線の再設計”という話に強く惹かれた。
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そこから経営や観光マーケティングに関心を持ち、大学で学びたいと思うようになった。
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このように、「最初はほんの些細な感情や興味だった」→「そこから調べていくうちに問題の構造を知った」→「自分でも何かしたいと思った」というように、きっかけは小さくてもよく、正直で具体的であることが何より重要です。
逆に、「いきなり強い問題意識を持った」「1つの体験だけで考えが変わった」といった飛躍は避けるべきです。読み手はあなたのことを知りません。だからこそ、丁寧に背景を説明しないと“共感”は生まれないのです。
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「なるほど」「確かにそういう気持ちになるよね」と読者に感じてもらえるように、小さな気づきやエピソードを正直に、段階的に、等身大の言葉で描いていくこと。それが、きっかけパートを成功させる鍵です。
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