私立探偵・天城のもとに、ある女の素行調査をしてほしいとの依頼が来る。 依頼人は資産家である古宮山亮三。詮索は不要、ただ調査結果さえ報告してくれればいいというシンプルなものながら料金が破格だったため、天城は依頼を受ける。
調査を進めるうちに分かってきたのは、女には恋人がいること。 そしてその恋人は、なんと古宮山家の長男・幸茂であること。
「あんた、あの家について調べているんだって?」 キャバレーで出会った美青年・奈倉の協力もあり、古宮山家に行く天城。
古宮山家では、先日病没した当主・榮の葬儀が開かれようというところだった。 葬儀の席において起こる毒殺未遂。
帰還した幸茂と、本来の調査対象・露草の君。 膠着していた古宮山家跡継ぎ問題を、天城は解決していく。
壽子と亮三夫妻が後を継ぎ、苗子は隠居として家にいることに。 奈倉の正体を知った苗子によって、帝都の外れに祠が作られる。 奈倉は古宮山家の出入りをやめ、名倉恒吉と名乗って天城の事務所に居座る。
天城 久里緒 アマギ クリヲ 私立探偵。古宮山家の者に依頼を受け、一連の騒動に巻き込まれる。 愛煙家で冷淡な男。きちんと依頼された仕事は真剣にやる主義。
奈倉 ナグラ 20代前半ほどの、謎めいた美青年。正体は落ちぶれた狐の神。 都の外れに小さな祠があるものの、かなり神格は低く、妖怪に近い。 神らしく人をおちょくったような態度で、いつもにやにやと笑っている。 縁あって古宮山家に出入りしたのがきっかけで、家族にもかかわらず金で争う人間たちに興味を抱き、古宮山家の人々にちょっかいを出す。
古宮山 苗子 コミヤマ ナエコ 老婆。老いてはいるが気品と並々ならぬ胆力を持つ。 先代当主古宮山榮の第二婦人。元々は榮の知己だった。
古宮山 幸茂 コミヤマ ユキシゲ 苗子の息子。長らく音信不通だったが、父の葬儀に恋人を連れて戻ってくるという。
露草の君(仮) 幸茂の恋人。天涯孤独の身の上。 貧しい生まれのため、壽子夫婦から家系に相応しくないと評される。
古宮山 榮 コミヤマ サカエ 資産家で同家当主。先日病没した。 彼の引退を機に古宮山家は衰退の一途を辿っている。 子供達のことを最期まで案じていた。
古宮山 彌通子 コミヤマ ミツコ 榮の第一婦人。華族の出身。二十年ほど前に病没。 何不自由なく育った身で、道楽者。
古宮山 壽子 コミヤマ ヒサコ 榮と彌通子の長女。 榮は長男である幸茂の方を愛しており、自分は眼中にないものだと思っている。 そのため、自分の立場を食う幸茂の存在を疎む。
古宮山 亮三 コミヤマ リョウゾウ 壽子の夫。実業家。事実上の、古宮山家次期当主。 努力で勝ち上がってきたインテリ。古宮山を自分の力で立て直し、主となるのが夢。 幸茂とその恋人の素行調査を天城に依頼した。
古宮山 照子 コミヤマ テルコ 榮と彌通子の次女。母親似の享楽主義者。 広い自宅に様々な人物を招き、サロン状態にしている。 顔立ちの整った奈倉にほれ込み、家に引き入れた。