はじめに

はじめまして(?)、たひといいます。この記事ははんドンクラブ Advent Calendar 2020の18日目の記事です。なんとなく人が書いてるのを見たら自分も書きたくなったので、普段やっていることでちょっと面白いかもしれない話を持ってきました。ざっくりと書いていてあまり正確なものではないので、気軽な読み物としてみてもらえればと思います。

宇宙空間について

いきなりですが、皆さんは宇宙と聞くと何を思い浮かべるでしょうか。夜空にたくさん見える恒星や、比較的身近な星である太陽やその惑星、最近話題になっているはやぶさ2が行ってきた小惑星、といったあたりがまず頭に浮かぶ方が多いかもしれません。もしくは、素粒子やブラックホールといった物理学の最先端というイメージもあるかもしれません。しかし、ここでは宇宙空間のお話をしたいと思います。この普段注目されない場所には何があって、何が起こっているのか、一般高校生ぐらいの前提知識で分かるように書きたいと思います。これを読むことで、宇宙空間で起きていることがちょっとだけ分かるかもしれません。

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図1. 宇宙空間(イメージ)。この記事では何もなさそうなこの場所について紹介していきます。

宇宙空間というと宇宙の中すべてを指すことになってしまいそうですが、ここでは星から十分に離れた場所のことを指すことにして、その中でも太陽系の宇宙空間を考えます(図1)。その宇宙空間には何があるのでしょうか。宇宙は真空であるという話をよく聞くと思うので、つまり宇宙空間には何もないのでしょうか。実は厳密な真空ではなく、少しだけ酸素原子などがあることが知られています。「少しだけ」というのがどれくらいかというと、これは場所にもよりますが大体$\rm 1 \ cm^3$中に数個といわれています。一瞬こんなものかと思ってしまいそうですが、よく考えてみるとこれは少しだけ、で済ませるにはちょっと少なすぎる量です。比較として普段触れている大気を考えると、そこには目には何も見えませんが、ものすごい数の粒子が存在しているはずです。地球の大気にはどれくらいの粒子が存在するかというと、$\rm 1 \ cm^3$あたりに$3 \times 10^{19}$個くらいだそうです(Wikipediaより)。ということは、どうも10000000000000000000倍ぐらいの差があるようです。なんだか全くピンとこない差ですが、この差を表す比喩として、日本海全体の体積に1滴の水があるぐらい、というのを聞いたことがあります。比喩の方も分かるような分からないようなという感じではありますが、とにかく、とっても少ないけど宇宙空間にも原子があるということです。でもそんなに少ないなら何もないのと同じじゃないの、と思うのですが、そうではないのが宇宙空間の面白いところです。

プラズマというもの

宇宙空間にはほんのわずかな原子だけがあるのですが、実は地球上と同じ形で存在しているわけではありません。そして、それがわずかな原子が面白い現象を引き起こす理由でもあります。宇宙空間の粒子は、基本的にはプラズマとして存在しています。プラズマというものについて、いろいろなところで(そして多くはなんだか怪しい製品の説明で)名前を見ると思いますが、基本的には電離した気体という言葉で説明されます。電離とは何だったかというと、ざっくり言ってしまえば原子が持っている電子を放り投げて、+の電荷をもつ陽イオンとーの電荷をもつ電子とに分かれることです。そんなわけで、プラズマというのは陽イオンと電子の状態で粒子が運動しているような気体ということになります。地球にも宇宙にもある酸素で考えると、地球上では酸素原子が2個くっついた酸素分子の状態でびゅんびゅん飛んでる(しかも超たくさん)のが、宇宙空間では分子ではなくさらに電子を放り出した状態で、陽イオンとなった酸素原子と放り出した電子とが一緒にびゅんびゅん飛んでいる、というイメージです(図2)。

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図2. プラズマのイメージ。電子と陽イオンに分かれてびゅんびゅん運動しています(この図はなんか動きがない感じですが)。

なるほど宇宙空間ではプラズマ状態なのね、と分かりましたが、それでも粒子が飛んでることには変わりなく、相変わらず個数はとっても少ないままです。しかし、プラズマとそうでない気体には一つ決定的な違いがあります。それは、電荷の存在です。電荷とはいわゆる電気のプラスとマイナスのことで、先ほど絵に描いたように陽イオンは正の電荷(プラス)、電子は負の電荷(マイナス)を持ちます。よく知られているように同じ電荷は反発しあい、違う電荷は引き合う力がはたらきます。この電荷にはたらく電磁気的な力が主役となって宇宙空間の様々な(そしてほとんどは目に見えない)現象を引き起こします。

電荷にはたらく力の影響

これまでの流れをまとめると、宇宙空間にはとっても薄いプラズマがあり、でも薄くても電荷にはたらく力があるからいろいろなことが起こるよ、という話でした。ここでは、具体的に電荷にはどんな力がはたらき、どう影響を受けるのかを見てみます。

まず電荷の受ける影響その①は、プラズマの中にある電荷同士に関わるものです。プラズマ中には電荷が自由に動ける状態でいるため、お互いに力を及ぼして運動することになります。そして、電荷というのは同じものに対しては反発力がはたらくため、電荷は周りの電荷から受ける力がぴったり同じになってバランスがとれるよう移動することになります。しかし、プラズマ粒子も重さを持つ物質のため、移動をしてからピッタリとバランスの良いところに止まることはできません。そのため、プラズマ中では電子もイオンも常にバランスを取るためにあっちへこっちへ移動しています(図3)。このような運動をプラズマ振動と呼び、プラズマ中で起こる基本的な現象として知られています。

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