

【 011.日本の中間領域 】
軒が「柔らかい境界線」をつくることは以前触れましたが、さらに縁側、廊下、他にも建具などがが組み合わさることで、さらに表情豊かな「中間領域」が形成されます。
「中間領域」というのは「完全な室内でもなく、完全な屋外でもない」曖昧な空間のことです。内外の緩やかなグラデーションが豊かな空間を生み出すのです。
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🔻 中間領域とは
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「中間領域」は、建築や都市計画の分野でよく使われる概念であり、内と外、私的空間と公共空間、あるいは異なる機能や目的を持つ空間の間に位置する空間を指します。この概念は、人々が快適に過ごせる場所を設計するための重要な要素となります。
■中間領域の特徴
- 柔軟な利用:
中間領域は、特定の用途に限定されず、様々な活動が行われる場所です。例えば、建物の入口やテラス、ポーチ、バルコニー、パティオなどが該当します。これらの空間は、住人や訪問者が自由に使えるため、用途が変化しやすいのが特徴です。
- 内と外の連続性:
建物の内部空間と外部空間を緩やかに繋ぐ役割を果たします。例えば、ガーデンルームやオープンデッキは、内部の居住空間と庭や自然環境を繋ぐ役割を果たします。これにより、内と外の境界が曖昧になり、空間の広がりや一体感が生まれます。
- 人間の交流促進:
中間領域は、人々が自然に集まり、交流を行う場所となります。例えば、マンションの共用廊下やエントランスホール、公園のベンチ周辺などがこれに該当します。こうした空間は、偶然の出会いやコミュニケーションを促進し、コミュニティの形成に寄与します。
- 気候への対応:
気候の影響を和らげる役割も果たします。例えば、屋根付きのポーチや庇(ひさし)は、日差しや雨を防ぎつつ、外の風や光を取り入れることができます。これにより、建物内の快適性が向上します。
■中間領域の具体例
- 縁側(えんがわ):
日本の伝統的な住宅における縁側は、建物の内部と庭を繋ぐ重要な中間領域です。縁側は、住人が庭を眺めながらくつろぐ場所であり、また、来客を迎え入れる場所としても機能します。
- カフェのテラス席:
カフェのテラス席は、店舗の内部空間と街の公共空間を繋ぐ場所です。ここでは、客が外の風景を楽しみながら飲食を楽しむことができます。
- マンションの中庭:
マンションの中庭は、住人専用の共用スペースであり、プライベートな空間と公共の外部環境との間に位置する中間領域です。ここでは、住人同士の交流や子供の遊び場として活用されます。
■中間領域の設計ポイント
- 多様性の確保:
中間領域は、多様な利用が可能であるため、柔軟性を持たせることが重要です。可動式の家具や多目的に使える設備を設置することで、様々な活動に対応できます。